普通の人より正確なアファンタジアの空間記憶
研究では、アファンタジアについて経験を話し合っているオンラインフォーラムから参加者を募集し、写真の部屋を思い出しながら描く、見ながら描くという2種類の作業をしてもらいました。
この実験に参加した人は、61人がアファンタジア、52人がそれ以外の人(対照群)です。
上の画像がその実験の一部を示すものです。左が使われた部屋の写真で、青字がアファンタジアの人の結果、赤字が普通の人の結果です。
それぞれ左が記憶を頼りに書いたもの、右が写真を見ながら書いたものになります。
普通の人ではほとんど違いはありません。少し描かれるオブジェの数やディテールが異なる程度でしょう。
しかし、アファンタジアの人は記憶を頼りに描いてもらった場合、非常に苦労していて、描かれた内容も非常にシンプルです。
それらしい輪郭を描いた中に、「窓(WINDOW)」とか「ベッド(BED)」と文字を書き込んでごまかす人もいました。
けれど、興味深いことに彼らのスケッチでは、本来部屋にないものや間違った位置に描かれたミスは、たった3回でした。
一方、普通の人では写真になかったものを描く間違いが多くあり、全体で14回も発生していました。
アファンタジアで無い人は、ひどい場合だと、暖炉、椅子、ソファしかなかった部屋にピアノを描き込んだ人もいたそうです。
この結果の違いは、アファンタジアの人たちが、視覚的なイメージの代わりに、言語などを使った映像以外の方法で空間を記憶しているためだと考えられます。
そのため、彼らはほとんど記憶違いを侵さないのです。
普通の人は、記憶を頼りにスケッチする際、別の景色からイメージを持ってきて描こうとするため、本来なかったものを描き足してしまうなどのミスを犯します。
これは人が空間記憶をどのように行っているか、脳のメカニズムを考える上でも興味深いものです。
まだまだ謎の多いアファンタジアですが、記憶映像を勝手に補間しないということは、アファンタジアの人は幽霊を見たりすることもないのかもしれません。