深層演技は「ストレス軽減」や「目標達成」に効果あり
研究チームは、アメリカで正社員として働く被験者、2500名以上を対象に、職場での感情労働や対人関係、タスクの達成度などの関連性を調べました。
評価づけをもとに、被験者は「非アクター・低アクター・高アクター・レギュレーター」の4タイプに分類されています。
・非アクター=感情面での演技をほぼしない人
・低アクター=表層と深層演技を低レベルながら行う人
・高アクター=表層演技はしないが、深層演技を高レベルで行う人
・レギュレーター=両方の演技を高レベルで行う人
その結果、表層演技をあまりせず、深層演技に大きく頼る人ほど、心理的な疲労感が軽減していたことが判明しました。
逆に、表層演技ばかりに依存する人は、自分や他者を欺いているという感覚が強くなり、ストレスレベルが高くなっています。
また、非アクターでも心理的な疲労度は低いことがわかっています(感情の演技をしないので当然かもしれません)。
ところが、深層演技をする人にのみ、疲労の軽減に加えて、職場での対人関係や職務の質の向上が見られたのです。
研究主任のアリソン・ガブリエル氏は「深層演技は、気分の向上、同僚との関係性の改善、タスクパフォーマンスの向上など、多くの面でメリットがある」と述べています。
一方で、現在のような特殊な環境下(パンデミックとリモートワークの増加)で、深層演技が同じ効果を持つかどうかは分かっていません。
また以前の研究で、深層演技への頼りすぎは、職場・社会と個人の同一化が過度に進行し、アイデンティティの喪失にも繋がる危険性が示されています。
そのため、深層演技の機会を増やしつつ、適度に表層演技を織り交ぜていくのがベストでしょう。