あまりに早く形成される超大質量ブラックホール
クエーサーとは、古い宇宙に見つかる非常に明るい天体のことです。
クエーサーの中心は超大質量ブラックホールで、これを動力にしてクエーサーを取り巻く銀河は猛烈な勢いで星々を生み出しています。
今回発見されたクエーサーは「J0313–1806」と名付けられています。
その中心にある超大質量ブラックホールは、太陽の16億倍の質量を持ち、天の川銀河全体の1000倍以上の明るさで輝いています。
発見された領域は、ビッグバンから6億7000万後の宇宙だと推定されており、これまで発見されていたもっとも古いクエーサーの記録をおよそ2000万年更新。
それにも関わらず、「J0313–1806」はその規模が2倍近く大きいのです。
このような非常に初期の宇宙に見つかる超大質量ブラックホールの存在は、それが形成されるための理論モデルに疑問を投げかけます。
従来の超大質量ブラックホールが形成されるメカニズムでは、主に2つのモデルが考えられていました。
第1のモデルは、初期宇宙では非常に巨大な星が誕生しており、それは巨大であるがゆえに短命で、短期間で崩壊して巨大なブラックホールを生み出していると考えられていました。
この巨大なブラックホールが合体していくことで、クエーサーとなるような超大質量ブラックホールが形成されるというのです。
第2のモデルでは、超大質量ブラックホールは、星の密集した集団(星団)が崩壊して生み出されると説明しています。
しかし、いずれのプロセスでも形成にはかなり長い時間を必要とします。
ビッグバンから7億年未満という期間内では、形成することは不可能です。
つまり、今回の発見は、こうした従来の2つの理論モデルを否定し、まったく異なるメカニズムから超大質量ブラックホールが形成されていることを示しているのです。