満月が近づくと寝付けなくなる?
月は約29.5日で地球を1周し、その時々の位置によって太陽光の当たり方が変わります。
月が太陽と同じ方向にあるときが「新月」で、地球からは月が見えません。
月が公転して太陽から90度の位置になると、半分だけ光が当たる「上弦の月」に、そこから反対側まで来ると「満月」に、さらに90度進むと、また半分だけが見える「下弦の月」に、そして新月へと戻ります。
すると、満月はひと月の中ほどで一度現れることになります。
研究チームは、この月の満ち欠けと、人の睡眠サイクルに関連性があるかを調べました。
対象としたのは、アルゼンチン北部・フォルモーサ州にある3地域の先住民コミュニティーと、75万人以上が暮らすアメリカの都市シアトルです。
都市部と農村部の両方で、就寝時間と睡眠時間に変化が現れるかを調査しています。
まず最初に、先住民コミュニティーでは、98名の被験者に参加してもらい、手首装着型のモニターで睡眠パターン(1人につき1〜2月周期)を記録しました。
調査期間中、3地域での電気アクセス環境は違っています。
1つ目の地域は、電力へのアクセスがなく、2つ目は、住宅内に1つの人工照明など、制限されたアクセス環境で、3つ目は都市部と同様に電気が使い放題でした。
調査の結果、3地域すべてで、満月が近づく数日間に就寝時刻が遅くなり、睡眠時間が減っていました。
平均すると、就寝時刻は約30分遅くなり、睡眠時間は46〜58分短くなっています。
また、満月前の3〜5日間に最も睡眠の変化が大きいことがわかりました。
これとは別に、シアトル在住の大学生464名を対象にした同様の実験でも、同じような変化が見られています。
しかし、変化の大きさは、電気へのアクセスが少ない農村部ほど顕著で、人工照明の多い都市部では小さくなっていました。
この結果について、研究主任のホレイシオ・デ・ラ・イグレシア氏は「月の明るさが主な原因」と述べています。
「それぞれの調査場所で、日没後に利用できる自然光は、満月が近くにつれ明るくなっていました。電気へのアクセスが少ない農村部では、この明かりが頼りになります。
睡眠パターンの変化はおそらく、数千年前の人類が満月前の数日間に活動時間を長くできたことに始まり、そのまま現代人に受け継がれている可能性が高い」と指摘しました。
一方で、「月の満ち欠けが人の行動に影響する」という考えに、疑問を呈す意見が多いのも確かです。
例えば、光害の大きな都市部では、月の明るさがほとんぼ影響しないように思われます。
研究チームは今後、月の満ち欠けが睡眠パターンに影響するメカニズムや、月以外に変化を起こすシグナルはあるか、といった点を調べていく予定です。