分裂した長周期彗星は定期的に地球を襲っている
ローブとシラージの理論から計算すると、長周期彗星の約20%はサングレーザーとなり、潮汐破壊現象によって地球に衝突する確率は約10倍も高くなるのだといいます。
彼らはこうした彗星の割合から考えた場合、「チクシュルーブ衝突体」レベルの物体が、地球の軌道を横切るのは2億5000万年から7億3000万年に1回発生すると予想しています。
さらに彼らは、この新しい理論が示す彗星衝突の確率上昇の時期が、恐竜たちを絶滅させた「チクシュルーブ衝突体」の落下時期と一致していると主張しているのです。
これまで「チクシュルーブ衝突体」の起源に関する一般的な理論は、これが木星と火星の間に存在する小惑星帯(メインベルト)から来たと予想していました。
しかし、ローブとシラージは、「チクシュルーブ衝突体」が長周期彗星だった場合、メインベルト由来の小惑星よりも、原始的な炭素質コンドライト組成を持っている可能性が高いと予想しています。
メインベルトの小惑星は、炭素質コンドライト組成を持つものは約10%程度です。
しかし、ほとんどの長周期彗星は炭素質コンドライトを持っていると予想されています。
そして、チュクシュルーブクレーターや、その他、現存する世界最大の隕石衝突跡である南アフリカ共和国のフレデフォード・ドーム、カザフスタンのジャマンシンクレーターを作った衝突体は、炭素質コンドライトの組成を持っていたことが示されています。
こうしたクレーター組成の証拠は、彼らの理論を支持しています。
ということは、地球は彼らの予想する通り、最低2億5000万年から7億3000万年に一度は、恐竜を絶滅させたような衝突体に襲われるということになります。
ちょっと恐ろしい話ですが、恐竜絶滅の歴史から、未来の地球の危機が予想されてしまいました。
現在は彼らの予想するようなサングレーザーの破壊が観測できないか、長周期彗星の観測がおこなわれています。
ここからより詳しいデータが集められ、統計的なデータが蓄積されていけば、彼らの理論の正しさをテストできるといいます。
興味深い理論ですが、地球を巨大隕石が襲う実証場面だけは見たくありませんね。