真犯人は「ユーフォルビアの毒液」
研究主任のマリオン・メイヤー教授(プレトリア大学)は、2015年から「フェアリーサークルの生成にユーフォルビアが関わっている」と考え、調査をスタートさせていました。
というのも、現地に自生するユーフォルビア・グレガリア種(Euphorbia gregaria)は、死ぬと粘着性の液体を放出して、土壌の草を枯らすことが知られていたからです。
この液体はかなり毒性が強く、目に触れると失明の危険性もあります。
現地民族のブッシュマンは、狩猟用の毒矢として使っているほどです。
調査の結果、死んだユーフォルビアが分解されると、粘着性の強い液体が分泌され、土壌に浸み込み、水をはじく撥水性を土に持たせていました。
さらに、液体中の物質が、地中の微生物を殺す抗菌性を持っていたため、他の植物の成長を妨げる環境を作り出していたのです。
ユーフォルビア自体は比較的短期間で分解されますが、粘着性の液体は土と混ざって硬質化し、長期間にわたり残存します。
これにより、フェアリーサークルが形成されていたのです。
また、ガスクロマトグラフィー質量分析によって、フェアリーサークルと、ユーフォルビアが分解中の土壌を比較した結果、化学成分的に近似していることが判明しています。
さらに、GIS空間パターンモデルという手法で、高度・降雨量・土地状況などを総合して、どこにフェアリーサークルが生じるかを予測したところ、そのポイントは3種のユーフォルビアの分布と見事に一致していたのです。
それにもとづいて、ナミビア南東端とカラハリ砂漠に新たなフェアリーサークルも見つかっています。
メイヤー教授によると、「フェアリーサークルは永続的なものではなく、雨が降ると地中の毒性が消えて、徐々に草が生え始める」とのこと。
一方で、フェアリーサークルがどのような気候条件で増減するかなど、調査すべき問題はたくさんあります。
とりあえず、シロアリの冤罪はこれで晴れたようです。