磁極反転を記録した古代の巨木 カウリの木
地球上では、磁極反転(ポールシフト)はたびたび発生しています。
磁極が完全に逆転する大規模な磁極反転は、およそ78万年前が最後だったと日本の研究者によって明らかにされました。
しかし、地磁気が不安定になって大きく移動する地磁気エスカレーション(地磁気遷移)は、およそ4万1000年前に発生していて、このとき約800年間に渡り地球の磁極は反転していたと考えられています。
この事実は強磁性鉱物に記録されていて、この地球最後の磁極反転は「ラシャンプ地磁気エスカレーション」と呼ばれています。
この時代はすでに人類の祖先も存在していた時代であり、ネアンデルタール人の絶滅にも、このラシャンプ地磁気エスカレーションが関係していた可能性が指摘されています。
しかし、具体的な磁極反転のタイミングや、環境への影響がどのようなものであったのかは明らかになっていませんでした。
ところが、これを記録した存在がニュージーランドで発見されたのです。
それは古代の木の年輪の中にありました。
ニュージーランドの北島には、ここにしか生えない非常に巨大な木「カウリの木」が存在しています。
カウリの木は成長が非常に遅く、年輪が非常に蜜に残されるとんでもなく長寿の木で、樹齢1000年を超えるものも珍しくありません。
このカウリの木は、ジュラ紀の頃から存在していたと考えられるとても古い種で、はるか昔に倒れたものが土中から発掘されることもあります。
今回研究グループが発見したのは、そんな堆積物の下に埋められた古代のカウリの木で、4万年以上前のものだと推定されました。
この古代の巨木の年輪には、地球の磁場が崩壊したことで引き起こされた、大気中の放射性炭素レベルの変動が記録されていました。
この放射性炭素とは、炭素年代測定で利用されている炭素14です。
炭素14は、宇宙線(宇宙から飛来する放射線)を浴びた上層大気中の窒素14が変異して生まれます。
これは化学的な性質は、普通の炭素と変わらないため、酸素と結びついて重い二酸化炭素になって地上に降りてきて、植物が光合成を行う際に取り込まれます。
このような過程で生まれるため、炭素14は地球では非常にまれな元素で全炭素の内、約1兆分の1%しか存在しません。
しかし、地磁気エスカレーションによって磁場が不安定となった場合、地球に降り注ぐ宇宙線の量が増えることで、この炭素14の濃度も上昇すると考えられます。
それが古代のカウリの木の年輪に記録されていたのです。
この年輪を分析することによって、研究グループは、この時期の地球大気がどのように変化していたかの詳細を明らかにすることができたのです。
そしてここからは、これまで謎とされてきた古代のいくつかの痕跡の意味が説明できるといいます。