「失われたメカニズム」の復元に成功!
「アンティキティラ島の機械」は回収された時点で、すでに大部分が錆びており、部品も3分の2が欠落していました。
さらに、残った部分も82の断片に分裂しており、復元はかなり骨の折れる作業でした。
これまでの研究で、機械は高さ15センチほどの箱型だったと推測されています。
表示板は全部で3つあり、1つは前面に、2つは裏面に付いていました。
前面の表示板には3つの針が見られ、1つは日付けを、残り2つは月と太陽を表していたようです。
また、表示板には同心円状のメモリが複数付いており、365日周期のカレンダーや黄道十二星座が刻まれています。
月の針を動かすと、各日における月の位置が分かるという仕組みです。
それから、当時のギリシャ人に知られていた5つの惑星(水星・金星・火星・木星・土星)の軌道や、月の満ち欠けを示す機能もあったと見られます。
使用された歯車は最低で30個、多くて72個とされており、その精巧さは18世紀の時計にも引けを取りません。
加えて、同時代に見つかっている他の歯車は、バリスタやカタパルトといった古代兵器に用いられた大型のものばかり。
それに比べると、この機械の歯車は非常に小さく、同時代の人工物として異例なのです。
以上が予想される大方の機能面ですが、いかんせん部品が欠如しているため、内部の歯車のメカニズムがあまり理解されていません。
そこでUCLの研究チームは、これらの設計が正確に機能するための装置の復元を試みています。
これまでに発見された盤面上の碑文や、古代ギリシャの哲学者パルメニデスが初めて考案した惑星運動の数学モデルをもとにしながら、わずか2.5センチのコンパートメントに収まる歯車の重なりをコンピュータモデルで作成しました。
完成した3Dモデルは、これまでに予想された月、太陽、5惑星の動きや、月の満ち欠けの動作の再現に成功しています。
さらに、再現された天体の動きは「すべての天体が地球を中心に回っている」という当時信じられていた天動説と見事に一致しました。
研究主任のトニー・フリース氏は「私たちのモデルは、先行研究で明らかにされた物理的証拠だけでなく、当時の科学的な思想背景にも適合する最初のモデルです。
それを踏まえた上で、この機械が、天才的な設計と優れた工学技術によって作られたことが改めて証明された」と述べています。
フリース氏はまた「本モデルはコンピュータ上の成果であるため、今後、複製パーツを使って実物を再現し、物理的に機能するかどうかを試したい」と続けます。
その一方で、「アンティキティラ島の機械を誰が作ったのか」という大きな謎が残されています。
当時としては時代のはるか先を行く知恵と技術をもった天才が、古代ギリシャにいたことは間違いありません。