あらゆるアレルギーや自己免疫疾患を抑えるタンパク質「ニューリチン」
免疫はわたしたちの体を守る重要な仕組みですが、時に誤作動を起こし「ポンコツ化」します。
その結果、花粉やそば粉のような無害な物質に過剰反応してしまう「アレルギー」や、自分の体を敵と認識して(裏切って)攻撃してしまう「リュウマチ」などの自己免疫疾患を引き起こし、私たちを苦しめます。
ですが残念ながら現代の医学では、これら免疫の誤作動(過剰反応や裏切り)を根絶する方法はみつかっていません。
病原菌やウイルスを外部からの侵略者だとするならば、免疫の誤作動は侵略者と戦うはずだった防衛軍が内乱を起こしている状態です。
解決するには正常な免疫能力を奪わないまま、問題を起こしている免疫だけを狙い撃ちする必要があります。
ですが、そのような都合のいい方法は簡単にはみつかりません。
そのため、これまで重度の自己免疫疾患に対しては、次善の策として、免疫力そのものを弱体化させる治療がおこなわれてきたのです。
転機となったのは、「濾胞制御性T細胞(ろほうせいぎょせいT細胞)」という特殊な細胞の発見でした。
新たに発見された濾胞制御性T細胞は、奇妙なことに免疫能力を減少させる能力がありました。
ただ発見当初は、なぜ免疫能力をわざわざ減少させる仕組みがあるのかは不明だったのです。
しかし今回、オーストラリアの研究者たちにより、この濾胞制御性T細胞から分泌される「ニューリチン」と呼ばれるタンパク質に、体にとって有害な抗体を作っている細胞(不正なB細胞)の増殖だけを抑え込む能力が確認されました。
また研究では実際に、自己免疫疾患に陥ったマウスにニューリチンを注射することで、免疫の誤作動を治療しマウスの健康が維持できることも示しました。
この結果は、濾胞制御性T細胞とニューリチンが、害となる抗体を作る不正な免疫細胞を取り締まる「警察」のような役割をしていることを示唆します。