世界を変えるHCI
HCI(ヒューマンコンピュータインタラクション)とは、その名の通り人と機械が相互にやり取りを行うための技術を指します。つまりは入力機器に関する技術です。
私たちの暮らす現実世界と、コンピュータなど機械が映し出す世界は直接つながってはいません。
そのため、お互いの世界を通信するための道具が必要になってきます。
これはときに、世界を大きく変革させる重要な技術となります。
もっとも初期のHCIは、キーボードです。
最初に登場した一般的なコンピュータは、キーボードを介してコマンド入力で命令を伝えていました。
しかし、文字を介した操作は非常に煩雑で、直感に反したものであり、一般の人にとってはかなり使いづらいものでした。
そんなコンピューター操作の問題を一変させたのが、1960年代にダグラス・エンゲルバードによって発明されたマウスです。
マウスが登場したことで、私たちは文字を使って機械に命令を入力するという方法から解放され、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)という直感的にコンピューターを操作する方法を手にしました。
GUIというのは現在も私たちが当たり前に使っている、WindowsやMacなどのOSが採用しているシステムです。
ファイルに見立てたアイコンをドラッグ・アンド・ドロップして、ファイルのコピーや保存場所の移動をさせたりできるのはGUIのおかげです。
さらに現在は、画面を直接タッチして操作するタッチパネルも主流になっています。
マウスがなければWindowsはなかったでしょうし、タッチパネルがなければスマートフォンは実現しなかったと考えれば、時代を変革させるのはHCIだというのも納得でしょう。
しかし、マウスはパソコンの置かれた決まった場所で使うことが前提であり、タッチパネルはモニターという触れる対象のあることが前提です。
今後主流になってくるだろうと予想されているARは、普段生活する私たちの視界の中に情報を表示するため、これまで活躍してきたHCIは役に立ちそうにありません。
先に普及しているVRの入力方法が応用できそうな気もしますが、VRも決まった場所で操作することが前提です。
基本的には動作をカメラに映したり、コントローラーを握りしめて操作を行うので、日常生活の中で動き回りながら利用することになるARの世界では、現実的な入力方法と言えないのです。
これからの時代には、また新しい画期的なHCIの発明が必要なのです。
そこでOculusなどVR機器でも有名な、FacebookのVR/ARの研究開発組織FRLは、ARの利用を意識した新しいHCIを発表しました。