流れで逆流を防ぐループ回路
実験では、空気の代わりに観察しやすいよう微粒子を混ぜた水を使って、鳥の肺構造を模倣した配管を構築しました。
重要なのは、鳥の肺の中ではループする閉回路が築かれているということです。
鳥の呼吸器官には、前気嚢と後気嚢という袋があり、ここに送り込まれた空気がポンプのようにして肺内部に一方向の空気の流れを作っています。
ここでは交流の状態で空気は動いているはずなので、鳥の肺の内部では、ポンプと閉回路の接合部になにか秘密があるはずです。
研究者たちは、この閉回路とポンプの接合部を移動する空気が、慣性バルブのような効果をもたらす可能性があると仮定して、実験を行いました。
Credit:Credit: NYU’s Applied Mathematics Laboratory,physics
これが実験示された結果の一例です。
この配管では、下側がポンプとして交流の気流が再現されています。しかし、上部の閉回路では常に気流は一方向に流れ続けます。
研究はこの実験結果を元にして、単純なネットワーク構造による流体のシミュレーションを行ってみました。
Credit: New Jersey Institute of Technology,physics
これがその結果です。各接合部を見てみましょう。
接合部では順方向に対してはまっすぐ接続され、逆方向は90度のT字を作るように組まれています。
すると、押し出された流体は、脇道に対しては流れをブロックするような渦を作っているのがわかります。
動画では赤く表示されているのが流体運動の回転成分を示しています。
つまり弁を持たずとも、回路の組み方によって、流体の渦が逆流を減らす弁として機能し、回路に整流効果をもたらしていたのです。
これは観察しやすいように流速を落としていますが、もっと流速が速くなった場合、より効果的に機能します。
慣性は流れを、脇道に曲げるのではなくまっすぐに続ける傾向があります。
この実験は、接合部がネットワークにどのように接続されているかにより、閉回路に一方向の流れと循環をもたらすことを示しています。
生物の体内に、これほどシンプルでエレガントな仕組みがあるとは、と他の研究者からも驚きの声が出ています。
こうした原理の解明は、今後人間が使う機械など技術的な部分で応用される可能性があります。