驚異的な酸素交換能力を持つ鳥の呼吸器官
哺乳類の肺の奥には細かく枝分かれした肺胞という袋があり、ここに空気が送り込まれて血液中の酸素交換を行っています。
当然、吸って、吐いて、という動作をするとき肺では空気の流れが入れ替わります。いわゆる交流の状態です。
しかし、鳥類の肺に肺胞はなく、代わりに気囊(きのう)という袋を使って、肺の中に常に一方向の気流を生み出しています。
つまり、吸うときも吐くときも常に一方向の直流状態で空気が流れているのです。
いちいち、空気の流れが切り替わらないので、鳥の肺は延々と途切れることなく酸素交換を続けることができます。
これにより、鳥は強力なエネルギーを得られる他、酸素濃度の薄い高高度でも飛び続けることができます。
飛行旅客機には、各座席に酸素マスクがついていますが、あれは高度1万メートルを超えるような高度では、空気が薄いために人間は呼吸をすることができないからです。
しかし、鳥類は標高8000メートルを超えるエベレストの上も飛んでいることが知られていて、高度1万2000メートルを飛行する飛行機のジェットエンジンに吸い込まれたという記録さえ存在しています。
こうした1方向にだけ空気を流す驚異的な鳥の呼吸器官については、1世紀前から知られていましたが、それを実現させる空気力学的な説明は、実はずっと謎のままでした。
口は1つしかないので、呼吸器官のネットワークには必ず接続点があります。
血流のように、逆流を防ぐ弁のようなものがあるならわかりますが、鳥の呼吸器には弁も、整流装置と呼べる器官も存在してはいません。
そこで、これを調査するためニューヨーク大学の研究チームは、鳥の呼吸を模倣した実験装置を作って、一連の空気の流れを実験してみることにしたのです。