天の川銀河の中心は不毛地帯?
天の川銀河の中心部、超大質量ブラックホール「いて座A*」から1000光年の範囲には、「銀河中心分子雲帯(central molecular zone:CMZ)」と呼ばれるガス雲の領域があります。
塵やガスの濃密な雲は、重力で集まっていき、そこから新しい星を誕生させていると考えられています。
しかし、それは宇宙の天気が非常に晴れやかな場合に限ります。
天の川銀河のCMZは、「いて座A*」の影響による潮汐力でガスが激しい乱流状態となっており、また強い磁場の影響もあるため、ガスが重力で集まりにくくなっていると考えられていました。
例外的に活発な星形成を起こしている「いて座B2」という領域もCMZには存在していますが、基本的にここは大量のガスがあるものの、星形成には向かない不毛地帯だと理解されていたのです。
国立天文台のシン・ルー特任研究員らの研究チームは、そんなCMZの抑制された星形成活動の実体を探るために、アルマ望遠鏡を使った観測を行っていました。
しかし、この観測からは、予想に反して800を超える高密度のガス塊が発見されたのです。
高密度のガス塊は「星の卵」に相当するものです。
そこで研究チームは、この星の卵が羽化する可能性があるのかどうかを探ることにしました。