大豆パワーでメスに変身⁈
ナマズ(学名:Silurus asotus)は、東アジアに分布する淡水魚で、古くから養殖が行われています。
しかし、ナマズのメスは1年未満で出荷サイズに達するのに対し、オスは出荷サイズ前に成長が停滞し、養殖期間を長引かせていました。
養殖場によってオスの比率が高いと生産効率が下がってしまい、場合によっては小型のオスを廃棄せざるを得なくなります。
そこで研究チームは、成長の早いメスだけを養殖するため、昨年9月から「大豆イソフラボン」を使った稚魚のメス化実験を始めていました。
大豆イソフラボンは、生物の体内で女性ホルモンと同様の作用を持つことで知られます。
実験では、孵化直後の稚魚を5つの飼育スペースに150匹ずつ放します。
5つの区画はそれぞれ内容が異なり、1つは普通の飼育水、2〜4は大豆イソフラボンの成分の一つである「ゲニステイン」を溶かした飼育水、5つ目は女性ホルモンを溶かした飼育水です。
2〜4は、ゲニステイン濃度をそれぞれ1Lあたり100、400、800μgと設定しています。
ちなみに、1μg(マイクログラム)は、100万分の1gです。
この環境で15日間飼育し、16〜150日目まではゲニステインを含まない飼育水に戻します。
その結果、普通の飼育水ではメスの割合が、68%だったのに対し、ゲニステイン400μg/Lで96%、それ以上で100%となりました。
大豆イソフラボンを用いた養殖魚の全メス化の成功例は他になく、今回が初めてです。
また、女性ホルモンよりも安全にメス化が行えることで、メスの価値が高い養殖魚への応用が期待されています。
研究主任の稻野 俊直(いねの としなお)准教授は「同実験場で研究しているチョウザメでも、大豆イソフラボンによるメス化が可能か研究していきたい」と述べています。