全身麻酔の仕組みから「意識の正体と発生源」が見えてきた
麻酔は現代医学にとって必要不可欠な存在です。
しかし意外なことに、麻酔が意識を途切れさせる詳しい仕組みは詳細にはわかっていません。
麻酔が脳に作用する様子を解明するには、究極的には「生きているヒトの脳」を実験素材にする必要があるからです。
そのためこれまでは次善の策として、脳に電極を刺している患者に麻酔をかけ、意識が失われたときと、復活するときに生じる電気的な変化を読み取るという方法が、行われてきました。
その結果、意識の形成には脳の皮質や中央部の視床から、一定のリズムで発せられる特徴的なスパイク(電気信号)が必要であるという可能性が浮かび上がってきました。
そこで今回、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者たちは可能性を検証するため、健康なサル(マカクサル)の脳の皮質に4カ所、視床に1カ所、電極を埋め込み、麻酔をかけて電気的な反応を観察することにしました。
結果、意識がある時には脳の各所は1秒間で7回ほどの特徴的なスパイクを発していたものの、麻酔が効き始めると頻度が低下し、1秒間に3~4回になるとサルは意識を失い、30分後には、0.2~0.5回にまで低下することがわかりました。
一方、麻酔を中断するとスパイクの頻度は徐々に回復し、1秒間に3~5回になるとサルは意識を取り戻しました。
この結果は、脳の各所から放たれる一定頻度のスパイクが、意識の形成にとって必要不可欠であることを示します。
ですが問題は、その理由です。
単純な信号が意識の形成にどのように関与しているのでしょうか?