スパイクは脳の各所の働きを統合するためのシグナルだった
スパイクが意識の形成にどのようにかかわっているのか?
ヒントとなったのは、2015年に行われた研究で観察された、視床と皮質の奇妙な関係でした。
麻酔が効いて意識が無い状態のとき、全ての皮質領域と視床との間に、低い周波数領域での強い同期がみられたのです。
意識のような高度な情報統合が脳で行われるときに必要となるのは、同期ではなく、脳の各所から発せられる高い周波数どうしの干渉(コミュニケーション)だと考えられています。
そこで研究者たちは、1秒間あたり7回のスパイクが、意識の形成に必要な干渉と関連しており、視床はその中で中核的な役割をしていると仮説を立てます。
そして仮説を証明するために、麻酔で意識がない状態のサルの視床を、大出力の電気で刺激しました。
すると、まず刺激された視床がスパイクを発し始め、次いで脳の各所でもスパイクが観察されました。
そして低周波領域で同期状態にあった脳の各所が次第に同期を打ち破って、高周波での干渉をし始めました。すると麻酔の効果中にもかかわらず、サルが目を覚ましたのです。
この結果は、単純なスパイクが、意識の形成において土台となる役割を果たし、脳の各所の活動を統合させ意識を形成するのに役立っていることを示します。