不明な点も多い錯視の世界の魅力
すべての色をグレースケール(白から黒の明るさの変化)に変換したバージョンは、よく似た働きの錯覚起こします。
これは「ホワイト錯視」と呼ばれていて、この効果は2010年に単独で科学雑誌「Colour:Design」に掲載された論文があります。
この例のように、灰色の四角形の上に白いストライプを置くと、それは明るい灰色に見えます。
しかし、同じ四角形の上に黒のストライプを乗せると、今度は暗い灰色に見えるのです。
論文の著者でもある心理学者のマイケル・ホワイト(Michael White)氏は、1960年代にこの効果を報告して知られるようになりました。
そして1970年には、別の心理学者ハンス・ムンカー氏が、同じ効果を色付きのバージョンで示しました。
そのため、この錯覚は「ムンカー・ホワイト錯視」と呼ばれています。
科学者たちは、この錯覚が起きるとき、脳で何が起きているのかについて議論していますが、現在のところ競合する複数の理論が存在しています。
ある研究者は、光が最初に網膜にあたる視覚処理の初期に錯覚がはじまると考えていて、別の研究者は、脳がデータ処理するときに効果が後から定着していると考えています。
もしくは、この2つが組み合わさって起きている可能性もあります。脳がどのように処理することで錯覚が起きるのかは、まだ明確にはなっていません。
錯覚の正確な原因がなんであれ、錯視を利用して遊ぶのは楽しいとノヴィック氏は語っています。
ノヴィック氏は現在、どの色の組み合わせがこの効果を最大化させるのかという研究を行っています。
また、日本の立命館大学の心理学教授北岡 明佳氏との共同研究で、ムンカー・ホワイト錯視が3D形状と、平らな2D形状でどう変化するか比較を行っています。
この画像を見ると、先程の3Dのボールによる錯覚画像と比べて、色合いの変化は淡いものになったように感じます。
「平らな円盤(2D形状)よりも球体(3D形状)の方が、より知覚しやすいというか、鮮明に見えるのです。その理由はわかっていません。今のところ、誰にもわからないと思います」
ノヴィック氏は、この結果をそのように述べています。
ノヴィック氏は、もともと北岡氏の作品に触発されて錯視の研究をはじめたと語っています。
北岡氏ウェブサイトでは、トップ画像にネットではもはや有名となっている見つめていると渦が波打ったり回転して見える有名な錯覚画像を掲載しています。
見つめていると具合の悪くなる人もいるようなので、気になる人は北岡氏のウェブサイトに行って直接見てみましょう。
サイト上には、めまいを感じたらサイトを直ちに離れるよう、警告が書かれています。
そんな北岡氏の作品をきっかけに錯視に興味を持ったノヴィック氏、2017年の夏から、自身で錯視画像の作成をはじめ、ツイッターに投稿し始めました。
現在彼は週に2つのペースで新しい錯視画像を投稿しています。
「妻がやってきて、『あなたのことがイギリスの新聞に載ってますよ』と言ったんです。そのときはじめて私は自分の投稿が口コミで予想外に広まっていることを知り驚きました」
そんなノヴィック氏の作品は、彼のツイッター投稿から閲覧できます。