水が凍る瞬間には熱が必要な場合があると判明!
私たちの身近に存在する水には、冷水よりもお湯のほうが早く凍るのという「ムペンバ効果」や、0℃以下に冷やした過冷却水が衝撃によって一気に凍っていく現象など、不思議な性質が知られています。
これら水の謎を解き明かすために、これまで世界中の研究者たちが多くの実験を繰り返してきました。
しかし、水が氷に変わる瞬間を実際に観察することは非常に困難でした。
水が氷になる最初の段階として行われる「氷の核形成」は10億分の1秒以下という驚異的な速度であるため、従来の顕微鏡に依存する方法では何が起きているかを正確に把握できなかったのです。
そこで今回、ケンブリッジ大学の研究者たちは上の図のように、マイナス173℃からマイナス143℃に冷やしたグラフェン板の上に水分子を置き、ヘリウム原子のビームを照射し続けることで氷の核形成の観測を試みました。
極めて低い温度に設定したのは水分子の運動速度を抑え、少しでも核の形成を捕らえやすくするためです。
またヘリウム原子のビームは、高速道路でのスピード違反を取り締まるレーダー波のように水分子の移動(氷結にともなう凝固)を検知するために使われました。
しかし実験をはじめるとすぐに、研究者たちは水分子の挙動に奇妙な点を発見します。
マイナス173℃のグラフェンの上に水膜を作った場合、水の分子たちは互いに反発し合うように距離を維持していたのです。
そしてこの状態からグラフェン板の温度を加熱していくと、板の各地に氷の核(氷の島)が形成さることがわかりました。
この結果は、液体の水が氷の核を形成する瞬間には、熱を必要とすることを示します。
問題は、その理由です。
表面張力が示すように本来なら引き合う性質を持っている水分子がなぜ反発し合い、しかもなぜ加熱によって氷結したのでしょうか?