「森とのふれあい」が多いほど、心身ともに健康に
本研究は、ロンドン市内の31の学校に通う9〜15歳の少年少女、合計3568人を対象としました。
この年齢は、子どもたちの思考や理性、世界に対する理解力が育つ重要な時期です。
研究チームは、都市にあるさまざまな自然環境と、子どもの認知機能の発達、メンタルヘルス、総合的な幸福感との関連性を調べました。
自然環境については、緑地(森林、草地、公園)と青地(川、湖、海)に分けられています。
また、衛星データを用いて、自宅と学校から50m、100m、250m、500mの範囲で、それぞれの子どもについて、1日にどれくらい自然環境に触れているかを割り出しました。
その結果、緑地の中でも特に森林とのふれあいが多いほど、認知機能の発達スコアが高くなり、さらに2年後の情緒的・行動的問題のリスクが16%低くなることが判明したのです。
草地でもそれに近い結果が得られましたが、青地(川、湖、海)については効果が見られませんでした。
一方で、チームは「対象者における青地へのアクセスが全体的に低かったため、確実に効果がないとは言い切れない」と述べています。
また、森林との触れ合いから、なぜこのような健康上のメリットが得られるのかはよく分かっていません。
研究主任のマイケル・メイズ氏は「たとえば、森林浴(森の景色、音、匂いに浸ること)は、リラクゼーション療法の一つであり、私たちの免疫機能をサポートし、心拍変動や唾液中のコルチゾールを減少させるという生理的な効果があるとされています。
それでも、森林からメンタルヘルスを向上させる心理的効果が生じる理由はわからない」と言います。
同チームのケイト・ジョーンズ氏は「ひとつの可能性として、自然の中で行う運動と豊富な動植物による視聴覚的なものが、メンタルヘルスを向上させるのかもしれない」と考えます。
先進諸国では現在、メンタルヘルスに支障をきたす年齢が下がっており、その一因として都市化がかかわっているのは間違いありません。
ロンドンではすでに、5〜16歳までの児童・青少年の10人に1人が精神疾患を患っています。
これは日本の子どもや若者にも言えることです。
もちろん、大人も例外ではなく、森林浴は年齢を問わず、心身にプラスの効果があります。
「心が疲れたな」と感じたときは、森に出かけてみるのがいいかもしれません。