一番クズは誰だ? ペルセウス座神話
一般的に知られる神話は、ざっくりまとめると以下。
古代エチオピア王家にアンドロメダという美しいお姫様がいた。
ケフェウス王の妻、王妃カシオペヤが海の妖精よりも娘アンドロメダが美しいと言ったところ、海の神ポセイドンの怒りを買い、化け物クジラが海で暴れるように。
ケフェウス王は神の信託により、泣く泣くアンドロメダを海の岩に鎖でつないで生贄に。
化け物クジラにアンドロメダが食べられようとしたとき、その目を見たものを石にする化け物、メデューサを倒した帰りのペルセウスが通りかかった。
ペルセウス、メデューサを化け物クジラに見せ、石化して倒す。
アンドロメダとペルセウスの2 人は結婚して、めでたしめでたし。
美女の危機に翼の生えた白馬にまたがり、空から登場するペルセウスのイケメン&ヒーロー談。
とはいえ、グリム童話と同様に、これは万人向けバージョン。たとえば「赤ずきんちゃん」のもともとの話なんて、猟師など出てこない救いのないものでしたからね。
以下が万人向けバージョンでない「大人向け」ペルセウス座神話です。
ペルセウス:助けたのは「偶然」じゃなかった
アンドロメダ姫が鎖で縛られているのを見つけたペルセウスはその美しさに一目惚れ。その後、ケフェウス王に助けたら嫁にくれと交渉します。すぐ助けずスルーするとは余裕がありますね。
ケフェウス王:嫁にやると嘘をついた
了承はしたものの、本音では嫌だったので反故に。アンドロメダのもともとの婚約者と共謀してペルセウスを暗殺しようとします。
ペルセウス:人々を石にした
それを知ったペルセウス、ガチギレ。ケフェウス王やアンドロメダのもと婚約者ほか共謀者たちをメデューサの首で石にします。
絵的にヒーロー感薄いような。下手すると悪役に見えてきます。
アンドロメダ姫:ドM…?
父と母、夫もこんなんじゃトラウマと人間不信になる体験の山積みですが、神話の家系図を見ると子どもが7人もできた様子。夫婦仲は良好だったんじゃないかと思います。神経が図太いのか、ドMなのか。
カシオペヤ王妃:自慢のため海の妖精をディスった
そもそもの問題が起こったのはカシオペヤ王妃のせいなんですが、ペルセウスやケフェウス王に比べるとかすみますよね……。
かわいいもんですよ、ね?
さて、今回の神話が「正しい」のではなく、いろいろなバージョンの話があるのだな、と神話の深みを楽しむのが正解です。
それに今回の話は、古代の作家ヒュギーヌスの著作からものです。ケフェウス王は反対しておらず、石にされたのはアンドロメダのもと婚約者とその仲間だけだった話もあります(上の絵画はこちらが題材です)。
ちなみに、今回取り上げた「ペルセウス座」と「くじら座」は、明るさが変わる面白い星「変光星」を持っていることで知られます。こちらの記事で神話とともに紹介していますよ。