2つのナルシストの異なる欲望
調査されたのは、特に「社会的地位」と「社会的包摂(しゃかいてきほうせつ)」を達成したいと感じているか?、またその達成に成功したと感じているか? という点についてです。
「社会的地位(ステータス)」とは、他人から尊敬され、称賛されることを指します。
それは目立つことでもあり、社会的階層の中で重要人物と見られていることも含みます。
「社会的包摂(インクルージョン)」とは、他人に好かれ、受け入れられることを指します。
社会的地位とは対照的に、こちらは社会的コミュニティの一部として他の人とうまく調和することを表すのです。
これは似ているようで、大きく異なった社会的立ち位置を示しています。
たとえば、会社の重役や政治家などは、社会的地位を持つ人ですが、人々から好かれているかというとそうでもない人が多いでしょう。
一方、下町のおかみさんみたいなキャラクターは、社会的地位はないでしょうが、人々からは好かれているというタイプになるでしょう。
研究では676人の成人を募集して、彼らの尊大型自己愛レベルと、脆弱型自己愛レベルを評価し、また社会的地位と社会的包摂をどの程度求めているか、その目標を達成したとどの程度感じているかを評価しました。
その結果、両方のナルシストが社会的地位を強く望んでいることがわかりました。
これはそれほど驚く結果ではありませんが、興味深いことに尊大型のナルシストはその達成に成功したと感じているのに対して、脆弱型のナルシストは自分にふさわしい社会的地位は得られなかったと感じていたのです。
また尊大型のナルシストは、社会的包摂を達成したとは感じていませんでしたが、特にそれを望んでもいませんでした。
一方、脆弱型のナルシストは、同じく社会的包摂を達成したとは感じていませんでしたが、それを強く望んでいたのです。
つまり尊大型のナルシストは自分の社会的目標は達成されていると考えていて、脆弱型のナルシストは何も社会的目標を達成できていないと考えていたのです。
どちらのタイプのナルシストも、他人の尊敬と賞賛を切望しています。
しかし、両者の社会でにおける状況は大きく異なっています(もしくは本人がそう認識しています)。
これは彼らが、社会的な状況においてどう振る舞うかにも違いをもたらしている可能性があります。
尊大型は困った性格かもしれませんが、社会的には有能です。彼らは社会の中では支配的で魅力的である可能性が高く、一方、脆弱型のナルシストは社会的スキルが低く、あまり人とうまく接することができない可能性があります。
このため、尊大型は、成功を最大化することを目指し、目標を追求することに率直で断定的ですが、脆弱型は失敗を最小化することを求めていて、臆病で防御的になります。
尊大型ナルシストは対人関係の舞台でスターであり、意気揚々とスポットラトを浴びているかもしれませんが、脆弱型のナルシストは観客の中に潜んで、憤慨しながらそれを傍観しているのかもしれません。