1日7000歩で、死亡リスクが50〜70%も低下
本研究では、アメリカの4つの都市から募集された約2000人の黒人と白人の男女(38〜50歳)を対象としています。
被験者には、装着した加速度計を用いて、1日の歩数と歩幅を記録してもらいました。
毎日の歩数は、活動中の歩く強度や時間帯とともに、重要な情報となります。
追跡調査は2005年に開始され、2018年までに定期的に歩数データの収集と健康チェックが実施され、最終的に72名の被験者が亡くなっていました。
データの分析から、被験者は、1日の平均歩数が7000歩未満、7000~9999歩、1万歩以上の3つに分けられています。
また、歩数以外の指標として、年齢、性別、BMI、食生活、学歴、人種、喫煙・アルコール摂取量なども記録しました。
すべてを考慮した結果、1日の平均歩数が7000歩以上の人は、7000歩未満だった人と比べて、65歳以下の早期死亡リスクが約50〜70%低いことが判明したのです。
歩幅や歩くスピード、運動の強度は、この死亡率に影響していませんでした。
さらに重要な点として、1日あたりの歩数が1万歩を超えても、死亡率のさらなる低下や目立った健康増進には繋がっていませんでした。
研究チームの説明によると、運動不足の人が1日の歩数を増やすことで死亡リスクは下げられますが、ある時点(歩数)を過ぎると、少なくとも特定の結果(死亡率)に対しては有益な効果はない、とのことです。
一方で、新たに設定された「1日7000歩」という基準値は、1万歩より達成しやすい目標であることは間違いありません。
本研究主任で、身体活動疫学者(physical activity epidemiologist)のアマンダ・パルーチ氏は「1日1万歩という数字に腰が引けて、目標の歩数を達成できていない人にとっては、勇気づけられる指標となるかもしれません」と話しています。
古代ギリシャの医師ヒポクラテスはかつて、「歩くことは、人類の最良の薬である」と言いました。
彼の提言は正しく、歩くことには、腰痛の緩和や肺活量の増加、消化機能の向上、メンタルの安定、糖尿病・心臓疾患のリスク低下、さらには、脳の活性化によるアルツハイマーの予防効果まで、あらゆるメリットが存在します。
しかも、もっともシンプルかつ簡単な運動であり、いつでも、どこでも、気軽に始められます。
まさに歩くことは、「お金のかからない万能薬」と言えるでしょう。