集団の感情を操作する化学物質は作成可能か?
今回の研究により、不安な感情は化学物質により、他人に伝染することが示されました。
また、この化学物質は主に女性において、他人に対する信頼度とリスクに対する積極性を、無意識のうちに、減少させる効果がありました。
腐敗した遺体から発せられるプトレシンの匂いが男女の両方に対して恐怖感情を引き起こし、ストレスを抱えた個人から発せられる匂いが性別に関係なく脳の感情処理回路を活性化させることから、男性にも嗅覚による感情の伝染を起こす能力があるのは確かです。
しかし、不安の伝染にかかわる化学物質の場合は、性差がありました。
このような性差はおそらく、進化の過程で獲得されたと考えられます。
他人の不安に対して、男性は鈍感であり、女性は敏感であることが、生存と生殖において有利に働く場面があったのでしょう。
研究者たちは今後、不安を媒介する化学物質の特定を進めると共に、不安以外のさまざまな感情の伝染現象を調査していくとのこと。
もし化学物質が、人間の精神と行動に支配的な影響を与えるならば、特定の集団に対して望みの感情を与えるような散布薬が開発できるかもしれません。