コロンブスより150年前の文書に「アメリカ大陸」の記述を発見
イタリア北西部・ジェノヴァ出身のコロンブスは、1492年8月3日にインドを目指して航海に出発。
10月11日、今日のバハマ諸島に到着し、ここをサン・サルバドル島と命名しました。
これが、西欧人によるアメリカ大陸の発見史の定説となっています。
ところが、2013年に発見された古文書に驚くべき記述が発見されました。
『クロニカ・ユニヴェルサリス(Cronica universalis)』と題されたこのテクストは、1345年頃に、ガルヴァネウス・フランマ(Galvaneus Flamma)というミラノの修道士によって書かれたラテン語文書です。
ガルヴァネウスは、この本の中では、世界の誕生〜14世紀までの歴史を詳しく著述しています。
ミラノ大の文学・言語学研究チームは今回、文書の翻訳、書き起こしの後、内容の分析を実施。
その結果、グリーンランドから南方に位置する「Marckalada」という地名についての記述が発見されました。
これはアイスランドで見つかった複数の古文書でも言及されている「マークランド(Markland)」と同じ地を指します。
そして、この地が今日のカナダ大西洋岸のラブラドール・ニューファンドランド地方を指していると考えられているのです。
本研究主任のパオロ・キエーザ氏は「この記述は、まだ初期の形ではあるものの、地中海世界におけるアメリカ大陸についての最初の言及である」と話します。
また、ガルヴァネウスが「Marckalada」の存在を知っていた理由について、次のように説明します。
「ミラノ南部の沿岸部の町ジェノヴァには、当時、イギリスや北欧、スペインと交易していたイタリアの船乗りたちが集まっていました。
ガルヴァネウスはおそらく、その船乗りたちを通して、諸外国のさまざまな情報を集めていたのでしょう」
イタリアの船乗りが、アイスランドやグリーンランドに到達したという記録はありませんが、スコットランド、デンマーク、ノルウェーの商人たちとは繋がりを持っていました。
その中で、北欧の人々が航海による冒険譚が伝わったのでしょう。
それから、「Marckalada」が新大陸として記録されなかった理由としては、地図の作成や学術的な記述をするには情報が曖昧すぎたからと予想されます。
しかし、この記述が確かなら、当時のイタリアの船乗りは、コロンブスよりはるか前にアメリカ大陸の存在を知っていたことになります。
そこで気になるのは、コロンブスは「Marckalada」の情報を知らなかったのか、ということです。
ジェノヴァの出身かつ船乗りであるなら、この謎めいた土地の情報を入手していた可能性は十分にあります。
しかし、彼が1492年の航海で目指したのはインドであり、「Marckalada」ではありませんでした。
やはりコロンブスは、アメリカ大陸の存在を知らずに到着したと考えるのが自然かもしれません。