「半殺し」にしたがん細胞を体に戻すと免疫療法が上手くいくと判明!
免疫細胞の力を強化して、がん細胞を殺そうとする免疫療法は、がん治療において画期的なアプローチでした(※オプシーボなど)。
しかし残念なことに免疫療法は完全ではなく、がん患者全体の13%未満にしか効果がありませんでした(がんの種類により最低5%~最高30%)。
効果が限られている原因は、免疫細胞を十分に活性化させることができなかったことにあります。
そこで今回、MITの研究者たちは、がんになったマウスから腫瘍の一部を取り出して化学薬品で「半殺し」にし、改めてマウスの腫瘍に戻すという方法を、免疫療法と組み合わせることにしました。
健康な細胞は回復の見込みがないほど大きく損傷すると、がん化など深刻なエラーを起こす前に、免疫システムに対して自らの「介錯」を求める信号を発します(※ここで言う「介錯」はアポトーシスの一種です。回復の見込みのない細胞は自ら信号を送って免疫細胞に殺されようとします)。
がん細胞にもこの「介錯」を求める仕組みが残っていた場合、免疫細胞に介錯信号を認識させることで、がん治療に役立つ可能性があったからです。
研究者たちは早速、マウスから摘出した腫瘍に対して、さまざまな化学薬品をふりかけて「半殺し」にした後、マウスの体内に戻して免疫療法の有効性を試す、という手順を繰り返しました。
結果、DNAに損傷を与える化学薬品で「半殺し」にした場合に、もっとも免疫療法の効果があがることが判明。
黒色腫と乳がんになっていたマウスの40%において、腫瘍が完全に消滅させることに成功します。
DNAをズタズタにされ「半殺し」となったがん細胞は、腫瘍に戻された後も免疫細胞に自らの「介錯」を求める信号を発し続けており、免疫細胞は半殺しになったがん細胞だけでなく「腫瘍全体を介錯の対象」と認識して攻撃をはじめられたからです。
どうやら細胞には、がん化して変わり果てた姿になっても、正常な細胞だった頃の介錯誘引システム(ある意味では良心と言える)を残していたようです。