がん細胞の半殺し信号を認識するには免疫力のブーストが不可欠
今回の研究により、DNAを損傷させたがん細胞を腫瘍に移植することで、免疫療法の成功率が劇的に上がることが示されました。
がん化した細胞にも異常化を防ぐ最後の手段としての介錯誘引システムが残っており、腫瘍に移植されることで、腫瘍全体を免疫細胞の攻撃ターゲットにできたのです。
また追加の実験で、半殺しにしたがん細胞をマウス体内の腫瘍本体に戻すだけでは、治療効果がないことが判明します。
免疫療法によって免疫力がブーストされた状態でなければ、半殺しにされたがん細胞が発する「介錯」を求める信号を、免疫細胞が感知できなかったからです。
さらに興味深いことに、半殺しにされたがん細胞は、半殺しにされたウイルス同様にワクチンとして働くことも判明します(※新型コロナウイルスのmRNAワクチンは弱らせたウイルスではなくmRNA(核酸)が主成分です)。
研究者が数ヶ月後にがんが完治したマウスに、がん細胞を注射したとき、マウスの免疫細胞は侵入してきたがん細胞を認識し、新しい腫瘍を形成する前に破壊することに成功したのです。
研究者たちは今後、DNA損傷をともなうがん細胞の半殺し法を、免疫療法が上手くいかなかった人間の患者にも試してみたいと考えています。
上手くいけば、免疫療法の有効率を劇的に向上させ、がんの完治や予防につながるかもしれません。