絶滅の危機から、まさかの「処女懐胎」
カリフォルニアコンドルは、アメリカ南西部・アリゾナ州北部とカリフォルニア州にのも分布する鳥です。
本種は、ほんの数十年前まで、絶滅の危機に瀕していました。
1980年代には、野生個体は20数羽しか残っていませんでしたが、熱心な保護活動と繁殖プログラムにより、危機を乗り越えています。
カリフォルニアコンドル・リカバリー・プログラム(California Condor Recovery Program・米)が昨年12月に発表した報告によると、2020年時点で504羽存在し、そのうち329頭が「野生下で自由に飛び回っている」とのことです。
しかし、本種は依然として危機的な状況にあり、その中で、オス不在の繁殖戦略が見つかったことはきわめて注目に値します。
父親なしで産まれた2羽を発見!
SDZWAの研究チームは、過去30年にわたり、1000羽以上のカリフォルニアコンドルのDNAを収集し、その情報をデータベース化して、追跡調査を続けてきました。
各個体の遺伝子分析を日常的に行い、その関係性を明らかにすることで、集団が遺伝的多様性を維持できるように注意しています。
これは、近親交配やコンドルジストロフィー(condor dystrophy、ヒナの奇形症や胎児期の死亡率の増加)などの遺伝性疾患の発生を防ぐのに役立ちます。
しかし最近、データベースに登録されていた2羽のオスの遺伝子を分析したところ、メス親の遺伝情報としか一致しないことが判明したのです。
この2羽は別々のメス親から生まれた個体でした。
メス親はそれぞれ、妊娠可能なオスと一緒に暮らしており、一方は11羽のヒナを、もう一方は23羽のヒナを通常の有性生殖で産んでいます。
ところが、それと別に、単為生殖で産まれたヒナが1羽ずついたのです。
コンドルの単為生殖では「オス」しか産まれない
鳥の性染色体は、私たちヒトとは違っています。
ヒトでは、女性がXX、男性がXYとなり、母親からX、父親からYを受け継げば、男児が産まれます。対して、両親からXを受け継げば、女児となります。
一方で、鳥類の性染色体は、オスがZZ、メスがZWです。
ここでメス親が単為生殖をした場合、WWの組み合わせは正しく発生できないので、必ずZZとなります。
つまり、鳥の単為生殖ではオスしか産まれないのです。
🚨BREAKING NEWS🚨
Scientists at SDZWA discovered two California condor chicks have hatched from unfertilized eggs. This sort of asexual reproduction, known as parthenogenesis, is a first for the species and provides new hope for their recovery. Read more: https://t.co/m5MZhqt21l pic.twitter.com/vRxGbKZy2S
— San Diego Boo 👻 Wildlife Alliance (@sandiegozoo) October 28, 2021
単為生殖が「好ましくない」理由とは
研究主任のシンシア・スタイナー(Cynthia Steiner)氏は、こう述べています。
「発見された2羽の遺伝子は、父方の遺伝的寄与がなく、100%母親由来のものでした。
コンドルが無性生殖できること、つまり子孫を残すチャンスが増える可能性があることは、非常に大きな意味があります」
一方で、懸念すべき問題もあります。
単為生殖では遺伝的多様性に乏しく、産まれてきた個体が病弱であったり、奇形になるリスクが高いのです。
現に、今回の2羽のオスは、一方が2003年に2才で、もう一方が2017年に8才で亡くなっています。
ですから、単為生殖で繁殖することは好ましくありません。
研究チームは今後、他にも単為生殖で産まれた個体がいるか、メス親が単為生殖するに至った要因などを解明していく予定です。