天敵から身を守るために「貝殻」をまとった?
プリアプルスという名は、ギリシャ神話に登場する男性の生殖力の神・プリアーポスに由来します。
プリアプルス自体は、生物の多様性が爆発的に増加したカンブリア紀(5億4300万〜4億9000万年前)から存在していました。
現存する子孫の姿を見れば、「ペニスワームと呼ばれても致し方ない」と納得するでしょう。
ちなみに、プリアーポスの図像がこちらです。
ダラム大学(Durham University・英)、雲南大学(Yunnan University・中国)の研究チームは今回、中国南部の発掘地で、カンブリア紀初期(約5億2500万年前)のプリアプルスの化石4つを発見しました。
ところがその姿は、現代のように無防備ではなく、円錐形の貝殻の中にすっぽりと納まっていたのです。
この貝殻は、4つともに「ヒオリテス(学名:Hyolitha)」という絶滅した生物のものでした。
このことから、太古のプリアプルスは、ヒオリテスを捕食した後に、貝殻を奪って身につけていたと考えられます。
研究主任のマーティン・スミス(Martin Smith)氏は、次のように説明します。
「他にも数十個の空の貝殻が見つかりましたが、プリアプルス単体の化石は存在しなかったことから、この2つの関係は単なる偶然ではないことが伺えます。
それぞれのワームは貝殻にぴったりと納まっており、一時的な避難場所としてではなく、カンブリア紀の捕食者から身を守るために使っていたのでしょう。
これは、プリアプルスが甲殻類より数億年も前にヤドカリスタイルを発明していたことを示す驚くべき発見です」
太古の海には、今と比べ物にならないほど、大小さまざまな凶暴生物たちがいました。
そんな中、泥砂に身を隠すだけでは十分な対策とならなかったのでしょう。
弱肉強食の世界がきっかけとなって、プリアプルスは「引きこもり」を思いついたのかもしれません。