森を背景に、斜めにのびた太い枝の上に立つ、赤いトサカと金色の首、黒い尾羽のオスのニワトリ No.0038

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ニワトリ

Gallus gallus domesticus

「コケコッコー」の声で朝を告げ、世界中で人とくらす鳥。
祖先は、東南アジアの森にすむセキショクヤケイ。

ナゾロジーの記事
22本
卵がかえるまで
21日
多産な卵用品種が1年に産む卵
300個以上

ニワトリは、東南アジアなどの森にすむセキショクヤケイを人が飼いならしてできた、キジのなかまの鳥です。世界で265億羽以上が飼われ、卵用の品種には1年に300個以上の卵を産むものもいます。朝の鳴き声は体内時計で決まり、群れの中では順位の高いオスから鳴きます。

図鑑データ

分類
鳥類 › キジ目 › キジ科 › ヤケイ属(Gallus)
学名
Gallus gallus domesticus(祖先のセキショクヤケイ Gallus gallus と同じ種とされる)
英名
chicken(チキン)。オスは rooster・cock、メスは hen、ヒナは chick
漢字
鶏(古い呼び名は「カケ」)
祖先
セキショクヤケイ(南アジア・東南アジアの森にすむ野生の鳥)
大きさ
品種によって大きくちがう。生まれたヒヨコは約37g。祖先のセキショクヤケイはオス約1.5kg、メス約1kg
体のつくり
頭にトサカ、くちばしの下に肉垂。歯はない。足の指はふつう4本。オスのあしにはけづめがある
食べもの
雑食。草の種や果実、虫、ミミズ、トカゲや小さなヘビ、ネズミの子どもまで
卵
卵用の品種は1年に300個以上産むものも。あたためて約21日でかえる
寿命
品種によって5〜10年ほど。16年生きた記録もある
数
世界で265億羽以上(2023年)。いちばん数の多い家畜の鳥
日本では
弥生時代に伝わったとされる。日本でつくられた品種(日本鶏)には天然記念物も多い

ニワトリとは(何類?何科?)

ニワトリは、人に飼われている鳥です。分類では鳥類の「キジ目キジ科」に入り、キジと同じなかまです。卵や肉をとるための家畜の鳥(家禽=かきん)として、世界中で飼われています。ペットとして飼う人もいます。

ニワトリの祖先は、東南アジアや南アジアの森にすむ野生の鳥「セキショクヤケイ(赤色野鶏)」です。ニワトリは、人がセキショクヤケイを飼いならして(家畜化して)できた鳥で、学問の上では同じ種とされています。学名は Gallus gallus domesticus です。ニワトリとセキショクヤケイは、今でも自由に子どもをつくることができます。のちにニワトリには、ハイイロヤケイなど別の種のヤケイの血もまざりました。たとえば、皮ふを黄色くする遺伝子は、ハイイロヤケイから入ったものです。

木もれ日の当たる林の地面を歩く、赤いトサカとオレンジ色の首の羽、緑がかった黒く長い尾羽をもつオスの鳥
祖先のセキショクヤケイ(タイ)写真: Jason Thompson(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

ニワトリは、世界でいちばん数が多く、いちばん広い地域で飼われている家畜の鳥です。2023年の時点で、世界のニワトリは265億羽をこえ、食用には毎年500億羽以上が育てられています。

鳥類は、恐竜のなかまから進化したグループです。ニワトリと同じキジ目の、ヤマウズラに似た地上や水辺でくらす鳥は、白亜紀の終わりに恐竜が絶滅した大量絶滅を生きのびたと考えられています。ニワトリは、恐竜から鳥への進化を調べる研究にもよく使われています(あとの「研究でも大活躍」で紹介します)。

大きさと体のつくり(トサカ・羽・特徴)

ニワトリの大きさや色は、品種によって大きくちがいます。祖先のセキショクヤケイはニワトリよりずっと軽く、オスは1.5kgほど、メスは1kgほどです。オスは長い尾羽をもち、全体の長さが70cmほどになることもあります。ニワトリには、ふつうのニワトリの4分の1〜5分の1ほどの体重しかない、小型の品種(バンタム)もいます。

生まれたばかりのヒヨコは、昔ながらの品種でも、今の品種でも、37gほどです。ところが、肉用に改良された今の品種は育つのがとても速く、ある品種では生後35日で1.8kgになります。同じ日数で、昔ながらの品種は1.05kgほどです。

  • トサカと肉垂(にくすい):頭の上の赤いひだを「トサカ(鶏冠)」、くちばしの下の左右に垂れる皮ふを「肉垂」といいます。耳は目の後ろにあり、そのまわりに「耳たぶ(耳朶=じだ)」があります。
  • くちばし:歯はありません。
  • 目:まばたきは、人とちがって、下のまぶたを上に向けてかぶせるようにします。鳥類は、色を感じる細胞(錐体)を4種類もっていて、ニワトリは紫外線も感じとれるとされています。
  • あし:多くの品種では、あしに羽が生えていません。足の指はふつう4本です(烏骨鶏は5本)。オスのあしの後ろには、とがった「けづめ(距)」があり、敵から身を守ったり、群れの中の順位を決めたりするのに使います。
  • 体温:体温は41℃ほどと高く、皮ふに汗をかくための汗腺がありません。暑いときは、くちばしを開けて息をして(パンティング)、熱を逃がします。
  • 羽:尾のつけ根にある「尾腺(びせん)」から出る分泌物を、くちばしで全身の羽にぬりこんで、水をはじくようにしています。羽は、ふつう1年に1回、夏から秋にかけて生えかわります(換羽)。地面で砂をあびる「砂浴び」もよくします。砂がよぶんな油を吸いとって、羽の油の量を整えます。

青い背景の前で横を向いた、ぎざぎざの大きな赤いトサカと、赤い肉垂、金色のふちどりの黒い首の羽をもつオスのニワトリの頭
トサカと肉垂写真: Michael Gäbler(CC BY 3.0) / Wikimedia Commons

ガラスケースの中の台の上に立つ、細い首と大きな胸の骨、長いあしの骨をもつ鳥の骨格標本
ニワトリの全身の骨格写真: Noukayami(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ニワトリの脳は、鳥類の脳にも哺乳類の大脳新皮質にあたる部分があるため、複雑な考えごとができると考えられています(あとの「群れのくらしと頭のよさ」で紹介します)。息をする、心臓を動かすといった生きるための基本的な働きや、多くの反射は、脳の「脳幹」がになっています。1945年、アメリカで頭の大部分を切り落とされたオスのニワトリ「マイク」は、脳幹の大部分と片方の耳が残り、血のかたまりで出血も止まったため、そのあと18か月生き続けました。

トサカは何のため? メスにもある?

トサカは、おとなになると、オスにもメスにもあります。ただし、オスのほうがずっと大きく、肉垂も目立ちます。英語でトサカを cockscomb(オスのトサカ)と呼ぶのは、このためです。

トサカは、体の調子や元気さを示すしるしになると考えられていて、相手を選ぶときの手がかりにもなります。祖先のセキショクヤケイでは、群れの中で強いオスほど、トサカが大きい傾向があります。

トサカの形は品種によってさまざまです。よく見る、もみじや手のひらのような形は「単冠(たんかん)」と呼ばれます。ほかに、低い3列の山がならぶ「豆冠(まめかん)」や、小さなつぶつぶにおおわれ、後ろにとげのような先がのびる「バラ冠」などがあります。色はふつう赤ですが、烏骨鶏のように、紫色がかったトサカの品種もいます。

ニワトリは飛べる?(飛べない理由)

祖先のセキショクヤケイは、飛ぶことができます。ただし、飛ぶのはおもに、夕方に木の上などのねぐらへ上がるときと、危険からにげるときです。マレーシアのアブラヤシ農園では、地上12mほどの高さをねぐらにするものもいます。

一方、ニワトリは、体も飛ぶための筋肉も重いため、短い距離しか飛べません。「飛べない鳥」と思われがちですが、まったく飛べないわけではないのです。

どこから来た?(祖先と家畜化の歴史)

祖先のセキショクヤケイは、西はパキスタンやインドから、東は中国南部やタイ、ベトナム、南はマレーシアやインドネシア、フィリピンまで、南アジアと東南アジアの広い範囲にすんでいます。森のふちのような場所や、焼き畑のあとなど人の手が入った場所を好み、人の住む場所の近くでもよく見られます。

ニワトリがいつ、どこで家畜になったのかは、長く議論されてきました。遺伝子の研究からは、およそ8000年前に東南アジアで家畜化されたという見方が出されています。2020年に、世界のニワトリと4種すべての野生のヤケイをふくむ863のゲノムを調べた研究では、ニワトリのもとになったのは、セキショクヤケイの亜種のうち、今は中国南西部、タイ北部、ミャンマーあたりにすむ「Gallus gallus spadiceus」だと考えられています。

一方、2022年に発表された研究では、89か国、約600か所の遺跡から見つかったニワトリの骨などを調べ直しました。その結果、確かに家畜のニワトリといえる最も古い骨は、タイ中部のバン・ノン・ワット遺跡の、紀元前1650〜1250年ごろのものでした。研究チームは、イネやキビのなかまを育てて蓄える農業が、木の上でくらすセキショクヤケイを人のそばに引きよせ、家畜化のきっかけになったと考えています。研究によって、年代の見積もりには大きな差があります。

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同じ研究によると、ニワトリが中国中部や南アジア、メソポタミアに広まったのは紀元前2千年紀の終わりごろ、エチオピアや地中海沿岸のヨーロッパに届いたのは紀元前800年ごろです。ヨーロッパと北西アフリカで見つかった古いニワトリの骨の年代を測った別の研究では、ニワトリは来てからしばらくの間、食べものではなく、めずらしい生き物として扱われていて、食べものと見なされるようになったのは数百年あとだったとみられています。

ニワトリは、台湾から太平洋の島々へ海をわたっていったオーストロネシア語族の人びとによっても、イヌやブタとともに運ばれました。

日本にはいつ来た?

日本には、弥生時代に朝鮮半島を通って入ってきたと考えられてきましたが、正確な年代は分かっていませんでした。弥生時代のニワトリの骨は、ほとんどがオスのものです。奈良県の唐古・鍵(からこ・かぎ)遺跡では、弥生時代中期のはじめの溝から、キジのなかまのヒナの骨が4つ見つかりました。2023年の研究で、骨のコラーゲン(タンパク質)を調べると、ニワトリのヒナの骨だと分かり、年代は紀元前4〜3世紀と確かめられました。少なくともこの村では、ニワトリを代々飼って増やしていた可能性があります。

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弥生時代のニワトリは、今の卵用や肉用の品種より小さく、チャボくらいだったとされます。見つかる骨が少ないことから、食べるためというより、鳴き声で朝を知らせる「時告げ鳥」として飼われていたと考えられています。江戸時代になると、無精卵はかえらないことが知られるようになり、鶏卵を食べても殺生にはあたらないとして、卵も食べられるようになりました。

何を食べる?

ニワトリは、植物も動物も食べる雑食です。自然の中では、足で地面をかいて、草の種や虫を探します。トカゲや小さなヘビ、ネズミの子どもくらいの大きさの動物を食べることもあります。

祖先のセキショクヤケイは、地面に落ちた果実や種をよく食べ、草や葉、根も食べます。虫などの節足動物もとり、シロアリを大量に食べることもあります。1羽の「そのう(食べたものを一時ためておく所)」から、約1,000匹のシロアリが見つかった例もあります。ヒナのうちは、おもに虫やその幼虫、ミミズを食べます。

飼われているニワトリには、トウモロコシやコムギなどの穀物に、大豆かすや魚粉などをまぜたえさ(配合飼料)がよく使われます。ニワトリには、自分で地面をかいたりつついたりしてえさを探したいという強い欲求が、家畜になった今も残っています。おなかがいっぱいでも、えさを探す時間が足りないと、なかまをつつくなどの行動が出ることがあります。

なぜ朝に鳴く?(コケコッコーの理由)

「コケコッコー」と大きな声で鳴くのは、おもにオスです。この鳴き声は、まわりのオスに縄張りを知らせる合図で、メスを引きつけたり、ライバルのオスに、近づけばけんかになることを知らせたりする役目もあります。まわりで急に何かが起きたときに鳴くこともあります。

朝に鳴くタイミングは、体の中の時計(体内時計)で決まっています。ニワトリを小さな群れで飼って調べた2015年の研究では、夜明け前に最初に鳴くのは、いつも群れでいちばん順位の高いオスで、ほかのオスは順位の高い順に続いて鳴きました。いちばんのオスを群れから外すと、2番目のオスが最初に鳴くようになりました。順位の低いオスも、外からの刺激があれば同じように鳴けます。それでも夜明けの最初の一声は、いちばんのオスにゆずっていたのです。

草の生えた庭で、頭を上げてくちばしを開けて鳴いている、大きな赤いトサカと黒い体、長くカーブした尾羽のオス
鳴いているオス写真: Tiia Monto(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

オスの声はとても大きく、1m先で100デシベルほどあります。2018年の研究で、オスの耳の入り口で測ると、142.3デシベルに達することがありました。オスは、くちばしを開けると耳の穴(外耳道)が閉じるつくりになっていて、これが自分の声から耳を守っていると考えられています。メスでは、耳の穴は細くなるだけで、閉じきりません。

メスは、卵を産んだあとや、ヒヨコを呼ぶときに鳴きます。また、ニワトリは、空から来る敵と地上から来る敵とで、ちがう警戒の声を出し分けます。

鳴き声の表し方は国によってちがい、日本語では「コケコッコー」、英語では「クックドゥードゥルドゥー(cock-a-doodle-doo)」、フランス語では「ココリコ」と表します。日本には、声の長さや美しさを楽しむ「長鳴鶏(ながなきどり)」の品種もいます。

群れのくらしと頭のよさ

ニワトリは群れでくらします。群れの中には強さの順番があり、強いニワトリは、えさを食べる場所や巣の場所を先に使います。つつき合いで決まるこの順位は「つつきの順位(ペッキング・オーダー)」と呼ばれ、1921年にシェルデラップ=エッベが、メスのニワトリで報告しました。オスどうしのけんかでは、とび上がってあしのツメでけります。

ニワトリは、群れで力を合わせて、弱っていたり経験の浅かったりする敵(たとえば若いキツネ)を追い回し、殺してしまうこともあります。祖先のセキショクヤケイの群れは、ふつう1〜数羽のオスと、何羽かのメスでできています。

家の横の日の当たる土の地面で、体をふせて砂をあびている茶色や白、黒のまだら模様のニワトリたち
砂浴びをするニワトリたち写真: Powerfox(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

「三歩歩けば忘れる」は本当?

日本には「鶏は三歩歩けば忘れる」ということわざがあり、物忘れの激しいことを「鳥頭(とりあたま)」と言います。けれども、実験で調べてみると、ニワトリはかなり頭のよい鳥です。

  • 数をあつかう:生後3〜4日のヒヨコの前で、物を2つのついたての後ろにかくし、そのあと1つずつ移しかえて見せました。するとヒヨコは、最後に多くの物がかくれている方を選びました。見えなくなった物の数を覚えて、足したり引いたりする、算数の芽生えのような力があると考えられています(2009年の研究)。
  • なかまの気持ち:自分のヒヨコに空気が吹きかけられるのを見た母鳥は、心拍数が上がり、ヒヨコに呼びかける声を出しました。共感(なかまの気持ちを感じとる力)の土台となる性質をもつことを示す結果です(2011年の研究)。
  • 生き物らしい動きに引かれる:暗やみでかえり、まだ何も見たことのないヒヨコでも、重力にさからって上へ動く物の方に近づきました。上向きの動きは生き物らしさの手がかりで、ヒヨコは生まれつき、これに引きつけられるようです(2023年の研究)。
  • やさしくされると「うれしい」:ゆっくりなでたり、おだやかに話しかけたりされた部屋と、人がじっとしているだけの部屋をくり返し経験させると、20羽のヒヨコは、そのあとのテストで、なでられた部屋に長くいるようになりました。やさしい触れ合いが、ヒヨコにとって「良いこと」になっていたと考えられています(2026年の研究)。

ニワトリの考える力や感情についての、それまでの研究をまとめた2017年の論文は、ニワトリの考える力や感情、社会的なつながりは、多くの点で、ほかの多くの鳥や哺乳類と同じくらい複雑だと結論しています。

ナゾロジーでくわしくヒヨコも人間との触れ合いで「幸せ」を感じている

「催眠術」にかかる?(緊張性不動)

ニワトリをそっとおさえて横向きやうつぶせ、あおむけにしたり、頭を下げさせて、くちばしの先から地面にチョークで線を引いたりすると、しばらく動かなくなります。「ニワトリの催眠術」として知られ、1646年にはもう記録があります。

これは「緊張性不動(トニック・イモビリティ)」と呼ばれる反応です。敵につかまったときに死んだようにじっとして、にげるすきを待つための行動と考えられていて、恐怖とかかわっています。こわい刺激を受けたあとほど動かない時間が長くなり、生まれてすぐの数日間に人に何度もさわられたニワトリでは、おとなになってから短くなります。ニワトリの恐怖心を測る方法として、1970年から、メンドリの飼育環境の評価にも使われています。

ナゾロジーでくわしくなんで? 線を書くだけで催眠状態に落ちるニワトリ

卵とヒヨコ(何個産む? 寿命は?)

オスは、メスのまわりで片方の翼を下げて回る「ダンス」をしたり、見つけたえさをくちばしで拾っては落として見せたりして、メスにアピールします。交尾では、オスとメスがおしりの「総排出口(そうはいしゅつこう)」をふれ合わせて、精子をわたします。

卵は、メスの体の中の「卵管」を通るあいだに、白身や殻がつけられ、総排出口から産み出されます。鳥類では、ふんも尿も卵も、この同じ出口から外に出ます。

なぜ毎日のように卵を産むの?

メスは、オスがいなくても卵を産みます。オスと交尾していない卵は「無精卵」で、あたためてもヒヨコにはなりません。お店で売られている卵のほとんどは、オスのいない環境で飼われたメスが産んだ無精卵です。

祖先のセキショクヤケイは、多くの地域で、季節によって繁殖する時期が決まっていて、1年に産む卵は数十個ほどといわれます(産卵の時期には、1日に1個ずつ産みます)。一方、卵用に改良されたニワトリは、明かりなど飼い方の条件を整えると、季節を問わず卵を産みます(羽が生えかわる時期には産卵が止まります)。2010年の研究では、すべての家畜のニワトリで、日の長さに合わせて繁殖をコントロールするのに大事な「TSHR」という遺伝子のまわりに、強い選抜のあとが見つかりました。季節を感じる遺伝子の働きが変わったことが、一年中卵を産むようになった理由の一つと考えられています。

さらに、卵を産んだあとに巣にこもってあたためる性質も、選抜によって弱められてきました。卵用の品種には、1年に300個以上の卵を産むものもいます。364日で371個という記録もあります。今の卵用種の主流は、19世紀に作り出された白色レグホンで、1年に280〜300個ほど産むとされます。

茶色の無地の背景の前に立つ、白い羽と小さな赤いトサカ、黄色いあしのメスのニワトリ
卵用の品種、白色レグホン写真: Stephen Ausmus, USDA ARS(Public domain) / Wikimedia Commons

卵の殻の色は、品種(遺伝)で決まります。おおまかには、耳たぶが白い品種は白い卵を、耳たぶが赤い品種は茶色い卵を産みます。チリ原産のアロウカナのように、うすい水色の卵を産む品種もいます。殻の色で、栄養に大きなちがいはありません。

ヒヨコが大きくなるまで

自然の中では、メスは何個かの卵を産みそろえると、巣にすわってあたため始めます(就巣)。その間は、卵がかえるまでほとんど巣をはなれません。卵は約21日でかえり、ヒヨコはくちばしの先にある小さな突起「卵歯(らんし)」で殻を割って出てきます。生まれてしばらくは、体の中に残った黄身(卵黄のう)から栄養をとります。

ヒヨコと母鳥は、卵がかえる前から声をかわしています。ヒヨコは生まれて1〜2日のうちに母鳥の声と姿を見分けて、あとをついて歩くようになります。母鳥は、ヒヨコを体の下であたため、えさや水のある場所へ連れていき、食べるものをつついて見せて教えます。自然の中では、母鳥といっしょにすごす期間は5〜12週間です。

金網とコンクリートの小屋の前に立つ茶色のメスのニワトリと、その足もとで地面をつつく黒や灰色、茶色のヒヨコたち
母鳥とヒヨコたち写真: Elena Chochkova(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

ヒヨコは黄色というイメージがありますが、これは、よく見かけるヒヨコの多くが、羽の白い品種のヒヨコだからです。実際には、品種によって茶色や黒、しま模様など、さまざまな色のヒヨコがいます。「卵の黄身の色がうつって黄色い」という話は、まちがいと考えられています。

わらをしいた地面の上に立つ、白くふわふわの羽と黒い目、うすいオレンジ色のあしのヒヨコ
わらの上のヒヨコ写真: H. Zell(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

祖先のセキショクヤケイでは、ヒナは4〜5週で巣立ち、生後12週ほどで母鳥に群れから追い出されて、新しい群れをつくるか、ほかの群れに入ります。おとなになるのは生後5か月ほどです。卵をとるための品種では、生後16〜20週ほどで卵を産み始めます。

寿命は何年?

ニワトリの寿命は、品種によって5〜10年ほどです。16年生きたニワトリの記録もあります。年をとるにつれて、卵を産む力は落ちていきます。卵をとるために飼われるメスは、卵を産み始めて12か月ほどたつと産む数が減るため、それほど長くは飼われません。日本では、卵用のニワトリは430日前後、肉用のニワトリは49日前後飼われるのが一般的です。

名前の由来と人とのかかわり

ニワトリという名前は、「庭で飼う鳥」という意味です。古くは、家の庭で飼う鳥を「庭つ鳥(にわつとり)」と呼び、これが「ニワトリ」になったと考えられています。もっと古い呼び名は、鳴き声からきた「カケ」でした。漢字の「鶏」は、ニワトリの姿をかたどった古い文字(甲骨文字)がもとになっています。十二支の「酉(とり)」にも、ニワトリがあてられています。

英語では chicken(チキン)といいますが、もともとは若いニワトリを指すことばでした。オスは rooster(ルースター)や cock(コック)、メスは hen(ヘン)、ヒナは chick(チック)と呼び分けます。

日本のニワトリ(軍鶏・チャボ・烏骨鶏・オナガドリ)

日本でつくられた品種は「日本鶏(にほんけい)」と呼ばれます。その多くは、卵や肉をとるためではなく、姿や鳴き声を楽しむためにつくられた品種で、国の天然記念物に指定されているものもたくさんあります。

  • 軍鶏(シャモ):もともと闘鶏(ニワトリどうしを戦わせる競技)のための品種で、オスはとても闘争心が強いです。名前はタイの古い呼び名「シャム」からきていて、江戸時代のはじめごろにタイから伝わったとされます。国の天然記念物です。
  • チャボ(矮鶏):小型の品種で、天然記念物です。
  • 烏骨鶏(ウコッケイ):皮ふも内臓も骨も黒っぽい色で、羽は絹糸のように細く、おとなになってもヒヨコのような綿毛のままです。足の指がふつうのニワトリより多い5本で、指の数にかかわる遺伝子(ソニック・ヘッジホッグ)の働きを調節する部分の変化が原因と分かっています。
  • オナガドリ(尾長鶏):高知県原産で、国の特別天然記念物です。ふつうのニワトリは1年に1回羽が生えかわりますが、オスのオナガドリは尾羽が生えかわらずにのび続け、10m以上になることもあります。

草の上に立つ、全身が白くふわふわの綿毛のような羽に包まれ、頭に羽の冠がある、顔が黒っぽいニワトリ
烏骨鶏(シルキー)写真: Benjamint444(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

白黒写真。白い服の女性の手にとまった、床まで届く長い尾羽のオナガドリと、長い尾羽を手に取って広げる白い服の男性
1923年ごろのオナガドリ(高知県)写真: 岡本作彌(Sakuya Okamoto)(Public domain) / Wikimedia Commons

食べものの表示で使われる「地鶏」は、日本農林規格(JAS)で決められた呼び名です。在来種の血を50%以上ひき、75日以上飼い、生後28日からは地面を自由に歩ける「平飼い」で、1m²あたり10羽以下で育てたニワトリを指します。

「ニワトリの惑星」

今、食用に飼われているニワトリの多くは、肉用(ブロイラー)と卵用(レイヤー)に分かれた品種です。ブロイラーは、ふつう6週間たらずで出荷できる大きさになります。2018年の研究によると、ニワトリの体の大きさは、中世の終わりごろから今までに少なくとも2倍になり、20世紀半ばからだけでも体重が最大5倍になりました。ブロイラーはもう人の世話なしでは生きられず、その合計の重さは、地球上のほかのすべての鳥を合わせたよりも重いとされます。研究者は、ブロイラーを、人が地球の生き物の世界をつくり変えたことの象徴だと指摘しています。

ナゾロジーでくわしく地球を「ニワトリの惑星」に変えた人類の功罪

ワールドウォッチ研究所の推計では、世界の家禽(ニワトリなど、肉や卵をとるために飼う鳥)の肉の74%、卵の68%が、たくさんの鳥を集中的に育てる工場式の農場で生産されているとされました。これに対して、外で自由に動ける「放し飼い(フリーレンジ)」で育てる方法もあり、動物の福祉や環境の面から、飼い方をめぐる議論が続いています。日本では、卵用のニワトリはケージで、肉用のニワトリは鶏舎の床を自由に歩ける平飼いで育てるのがふつうで、放し飼いはほとんど行われていません。

黄色い落ち葉が散る草地に立つ、赤いトサカと肉垂、銀色の首の羽と黒い体のオスのニワトリ
放し飼いのオス(ドイツ)写真: Jebulon(CC0) / Wikimedia Commons

ニワトリには、血を吸うダニのなかまの「ワクモ」などの寄生虫や、鳥インフルエンザなどの病気がとりつきます。ワクモはかゆみを起こして卵を産む数を減らし、サルモネラ菌などの病気を運ぶこともあります。

研究でも大活躍

ニワトリの卵は、動物の体ができていくようすを調べる研究に、昔から使われてきました。卵をたくさん手に入れやすく、殻を開けて中の胚(はい)を観察したり、手を加えてからまた閉じて、そのあとの育ち方を調べたりできるからです。翼やあしなど、手足のでき方についての大事な発見の多くは、ニワトリの胚から生まれました。ニワトリは、鳥類で初めてゲノム(全遺伝情報)が読まれた種でもあります。2024年には、産みたての卵の中身を透明なフィルムの容器に移して、胚ができはじめるところからヒヨコがかえるまでを、あらゆる方向から見られる方法も発表されました。

ナゾロジーでくわしく「見慣れた卵の中身がどうやってヒヨコになるの?」一連の過程を見える化する方法を開発!

恐竜から鳥への進化を探る研究にも、ニワトリが使われています。2023年の研究では、ニワトリの胚に、羽などのつくりにかかわる「ソニック・ヘッジホッグ(Shh)」という信号を一時的に強める薬を与えると、足や指の裏のうろこが、おとなになっても生えかわる本物の羽に変わりました。反対に、2025年の研究で、この信号を弱める薬を胚に注射すると、羽は枝分かれしない棒のような形になり、恐竜の「原始的な羽毛」に似た状態が一時的に現れました。2006年には、talpid2 という変異をもつニワトリの胚で、あごに歯ができはじめることも報告されています。

ナゾロジーでくわしく現代ニワトリに蘇る「恐竜の羽」――最先端実験が暴く進化の逆再生

病気に強いニワトリをつくる研究も進んでいます。2023年の研究では、鳥インフルエンザウイルスが増えるときに利用するニワトリのタンパク質「ANP32A」の遺伝子を、ゲノム編集で書きかえました。ウイルスを感染させる実験で、書きかえたニワトリ10羽のうち9羽は感染しませんでしたが、ウイルスの量を増やすと感染する例が出ました。研究チームは、ウイルスを防ぎきるには、複数の遺伝子を書きかえる必要があるとしています。

ナゾロジーでくわしく遺伝編集で鳥インフルエンザに耐性のあるニワトリを作成!

よくある疑問

ニワトリは何類? 何科?
ニワトリは鳥類で、キジ目キジ科の鳥です。南アジアや東南アジアの森にすむ野生の鳥セキショクヤケイを、人が飼いならしてできた家畜の鳥で、学問の上ではセキショクヤケイと同じ種とされています。
ニワトリは飛べる? なぜ飛べないの?
短い距離なら飛べます。祖先のセキショクヤケイは、夕方に木の上などのねぐらへ上がるときや、危険からにげるときに飛びます。ニワトリは、体も飛ぶための筋肉も重いため、長い距離は飛べません。
ニワトリはなぜ朝に鳴くの?
鳴くタイミングは体内時計で決まっていて、夜明け前から鳴きはじめます。オスの鳴き声は、まわりのオスに縄張りを知らせる合図です。群れでは、いちばん順位の高いオスが最初に鳴き、ほかのオスは順位の高い順に続くことが分かっています。
ニワトリは1年に何個卵を産む? 何歳まで産む?
卵用の品種には、1年に300個以上産むものもいます。364日で371個という記録もあります。祖先のセキショクヤケイは、1年に数十個ほどといわれます。卵用のニワトリは生後16〜20週ほどで産み始め、年をとるにつれて産む力が落ちます。卵をとるために飼われるメスは、卵を産み始めて12か月ほどたつと産む数が減ります。
オスがいないのに、なぜ卵を産むの? どこから産むの?
メスは、オスと交尾しなくても卵を産みます。この卵は無精卵で、あたためてもヒヨコにはなりません。卵はメスの体の中の卵管でつくられ、おしりの総排出口から産み出されます。ふんや尿も、同じ出口から出ます。
ニワトリの寿命は? 何年生きる?
品種によって5〜10年ほどです。16年生きたニワトリの記録もあります。
ニワトリは何を食べる?
植物も動物も食べる雑食です。草の種や果実、虫、ミミズなどを食べ、トカゲや小さなヘビ、ネズミの子どもを食べることもあります。飼われているニワトリには、トウモロコシなどの穀物に大豆かすや魚粉などをまぜたえさがよく使われます。
「ニワトリは三歩歩けば忘れる」って本当?
昔からのことわざです。実験では、生後3〜4日のヒヨコが、ついたての後ろにかくされた物の数を覚えて多い方を選んだり、母鳥が、こわい目にあうヒヨコを見て心拍数を上げ、呼びかけたりすることが分かっています。ニワトリの考える力や感情は、多くの点でほかの多くの鳥や哺乳類と同じくらい複雑だとする研究もあります。

ナゾロジーで読む22本

  1. 01 ヒヨコも人間との触れ合いで「幸せ」を感じている
  2. 02 【首なしマイク】首をはねられたのに18カ月も生き続けた奇跡のニワトリ
  3. 03 「卵が先か鶏が先か」よく聞く疑問に生物学者がマジレスすると?
  4. 04 現代ニワトリに蘇る「恐竜の羽」――最先端実験が暴く進化の逆再生
  5. 05 「見慣れた卵の中身がどうやってヒヨコになるの?」一連の過程を見える化する方法を開発!

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参考文献

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表紙の写真: Philip Pikart(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。