1万8000年前のニューギニアで「ヒクイドリ」が飼育されていた?
1万8000年前のニューギニアで「ヒクイドリ」が飼育されていた? / Credit: jp.depositphotos
history archeology

鶏より以前に古代ニューギニアで「ヒクイドリ」が家畜にされていた可能性が浮上 

2021.09.30 Thursday

人類に家畜化された鳥の代表はニワトリであり、養鶏の歴史は少なくとも8000年前に遡ると言われています。

しかし今回、ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)を中心とする国際研究チームにより、約1万8000年前のニューギニアの古代人は、大型鳥類のヒクイドリを飼育していた可能性が浮上しました。

これは養鶏が始まる数千〜1万年前のことであり、サイズや攻撃力など、ニワトリとはわけが違います。

一体、何のために飼育していたのでしょうか?

研究は、9月27日付けで学術誌『PNAS』に掲載されています。

 

Late Pleistocene humans may have hatched and raised cassowary chicks https://phys.org/news/2021-09-late-pleistocene-humans-hatched-cassowary.html
Late Pleistocene/Early Holocene sites in the montane forests of New Guinea yield early record of cassowary hunting and egg harvesting https://www.pnas.org/content/118/40/e2100117118

卵殻から「ヒナの発生段階」を特定する方法を確立!

ヒクイドリ(火食鳥)は、ニワトリのような並の鳥類ではありません。

固有種はインドネシア、ニューギニア、オーストラリア北東部の熱帯雨林に分布しており、エミューやダチョウと同じ”飛べない鳥”です。

平均的な高さは127〜170センチで、最大個体だと190センチ、85キロにもなります。

現存する鳥類の中でも、ダチョウとともに最大種の一つであり、鋭い爪や足など、かつての恐竜の面影を残した巨鳥です。

一方で、ヒクイドリのヒナには刷り込みが可能であり、飼育も比較的容易で、成鳥まで育て上げることができます。

(刷り込み:孵化したばかりのヒナが最初に目にしたものを母親と認識する習性。それが人間だった場合、ヒナはどこまでもその人の後をついて回るようになる)

成鳥もおとなしい性格ではあるものの、体格や攻撃力の高さに変わりはなく、2019年には飼い主を殺害した事件も報道されています。

さて、今回の研究チームは遺跡から見つかる卵の殻の研究を行っていました。

その過程から、チームは卵の殻からヒナの発生段階を特定する新たな方法を開発したのです。

研究主任のクリスティーナ・ダグラス氏は、こう話します。

「私は長年の間、考古学遺跡で見つかる卵殻を採取し、調査してきました。

その中で、七面鳥の卵殻に関する研究において、卵殻は胚が成長する過程で変化し、それがヒナの発生段階を示すことが発見されたのです。

これは非常に有効なアプローチだと考えました」

卵殻からヒナの発生段階が推定できる
卵殻からヒナの発生段階が推定できる / Credit: Kristina Douglass et al., PNAS(2021)

胚やヒナの発生段階は、卵殻の内側の3次元的な特徴に依存します。

また、卵殻の内側が変形するのは、発生中のヒナが卵殻からカルシウムを摂取するためと判明しました。

この仕組みを元にした胚(ヒナ)の発生段階の特定は、ダチョウの卵殻サンプル計504個の分析から、高い正確性を誇ることが確認されています。

研究チームは、このモデルをニューギニアの遺跡で見つかったヒクイドリの卵殻に適用しました。

すると、ちょっと不自然に思われる事実が発見されたのです。

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