晴れた雪原に、黒と白のおとなのコウテイペンギンと、灰色の綿毛のヒナがたくさん立っている No.0025

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ペンギン

Spheniscidae

空は飛べないけれど、海の中を飛ぶように泳ぐ。
南極から赤道まで、南の海にくらす鳥。

ナゾロジーの記事
29本
コウテイペンギンの体長(平均)
約115cm
コウテイペンギンがもぐった深さの記録
564m

ペンギンは、飛べない海鳥のなかま(ペンギン科)です。つばさが変化したフリッパーで水の中を飛ぶように泳ぎ、魚やオキアミ、イカを食べます。17〜19種がほぼ南半球にすみ、南極だけでなく、赤道直下のガラパゴス諸島にもいます。

図鑑データ

分類
鳥類 › ペンギン目 › ペンギン科
学名
Spheniscidae(ペンギン科)
英名
penguin(ペンギン)
漢字
人鳥(じんちょう)、企鵝(きが)。今はほとんど使われない
種の数
17〜19種(分け方によってちがう)。6つの属に分けられる
大きさ
最大のコウテイペンギンは体長(くちばしの先から尾の先まで)平均約115cm・体重約35kg、最小のコビトペンギンは30〜33cm・1.2〜1.3kg
体のつくり
つばさは泳ぐためのフリッパーで、空は飛べない。歯はなく、口や舌にうしろ向きのトゲ。背中は黒く、おなかは白い
すみか
ほとんどが南半球。南極、南アメリカ、アフリカ南部、オーストラリア、ニュージーランドなど。赤道直下のガラパゴス諸島にも。北極にはいない
日本では
野生はいない。全国の動物園・水族館で飼われている(フンボルトペンギンが多い)
食べもの
オキアミなどの甲殻類、魚、イカのなかま
寿命
野生のコウテイペンギンで平均約20年。飼育下では40歳以上まで生きたオウサマペンギンの記録がある
保全状況
多くの種で数がへっている。IUCN の評価は種により「低懸念」から「近絶滅種」まで。ケープペンギンは2024年に「近絶滅種」に

ペンギンとは(鳥? 何類? 何種類?)

ペンギンは、飛ぶことのできない海鳥のなかまです。分類では「ペンギン目ペンギン科」にまとめられる鳥類で、体は羽毛におおわれ、くちばしをもち、卵を産んでふえます。陸の上ではよちよち歩きますが、海の中では、つばさが変化した「フリッパー」を羽ばたかせて、水の中を飛ぶように泳ぎます。一生のおよそ半分を陸で、残りの半分を海ですごします。

種の数は、数え方によって17〜19種とされます。これらは、6つの属(近いなかまのまとまり)に分けられています。コウテイペンギンとオウサマペンギン(キングペンギン)のオウサマペンギン属、アデリーペンギン・ヒゲペンギン・ジェンツーペンギンのジェンツーペンギン属、フンボルトペンギン・ケープペンギン・マゼランペンギン・ガラパゴスペンギンのケープペンギン属、頭に黄色い飾り羽をもつイワトビペンギン属などです。これまで1種とされてきたイワトビペンギンを、遺伝子のちがいから3つの種に分ける考えもあります。

鳥のなかで、ペンギンにいちばん近いのは、外洋でくらすミズナギドリのなかま(ミズナギドリ目)です。48種の鳥のゲノム(全遺伝情報)を調べた2014年の解析では、両者が分かれたのは約6000万年前とされました。

大きさと体のつくり(特徴)

いちばん大きいのはコウテイペンギンで、おとなの体長(くちばしの先から尾の先まで)は平均約115cm、体重は平均35kgほどです。いちばん小さいのはコビトペンギン(フェアリーペンギン)で、背の高さは30〜33cm、体重は1.2〜1.3kgほどしかありません。今のペンギンは、大きな種ほど寒い地域に、小さな種ほど温かい地域にすむ傾向があります。

  • つばさ:つばさは、かたく平たい「フリッパー」になっていて、空を飛ぶことはできません。フリッパーの骨(上腕骨や尺骨など)は幅が広く平たくなっていて、ひじや手首の関節はほとんど動きません。
  • 立ち姿:多くの鳥は、胴体を前にたおして首を起こした姿勢をとりますが、ペンギンは胴体をまっすぐ立てます。陸の上では、尾とつばさを使ってバランスをとっています。
  • 足:「足が短い」と思われがちですが、実は脚の上の部分は、皮下脂肪の内側に、折れ曲がった姿勢でかくれています。体の外に出ているのは、足首から先の部分だけです。
  • 口:歯はありません。ヒナのときから歯がないかわりに、口の中に、うしろ向きのトゲがならんでいます。舌にもトゲがあり、くわえたすべりやすい獲物を逃がしません。
  • 鼻と塩:ペンギンは海水を飲むことができます。目の上にある腺(眼窩上腺)が血液から余分な塩分をこしとり、こい塩水にして、鼻の通り道から外に出すためです。
台の上に立つペンギンの全身の骨格。首の骨が長くのび、脚の骨がひざで折れ曲がっている。手前に「African Penguin」の札
ケープペンギンの骨格写真: Polyoutis(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ペンギンの、よちよち歩きを支える筋肉も調べられています。2026年には、マカロニペンギンの体を解剖した研究で、胸の骨(胸骨)から左右のすねの骨へのびる筋肉が、ほかの筋肉の一部ではなく、独立した筋肉だと確かめられました。100年以上前から議論されてきた筋肉です。研究者は、水の中では左右の脚を寄せて体の形をなめらかに保ち、陸の上では、脚を内側に寄せて体を支えるのに役立っていると考えています。

ナゾロジーでくわしくペンギンの「よちよち歩き」を支える謎の筋肉――100年の時を経てついに発見か

なぜ白黒? 羽毛のひみつ

どのペンギンも、背中とつばさが黒っぽく、おなかが白い色をしています。これは「カウンターシェーディング」と呼ばれる、目立たなくするための色です。下からシャチやヒョウアザラシが見上げると、白いおなかは、明るく光る水面にまぎれて見分けにくくなります。上から見ると、黒い背中が暗い海にまぎれます。

体は、密に生えた羽毛でおおわれています。なめらかな羽毛の中には空気の層があり、これが浮力を生むとともに、冷たい水の中で体温を逃がしにくくしています。コウテイペンギンでは、羽毛にためた空気を泡にして出し、海水と体のあいだの摩擦をへらして、すばやく泳いでいることが観察から分かったと報告されています。

イワトビペンギン属のペンギンは、目の上に黄色い飾り羽(冠羽)があり、「とさか」のようにも見えます。ミナミイワトビペンギンでは、まっすぐな黄色い「まゆ」の先が、赤い目の後ろで長い飾り羽になって横に広がります。イワトビペンギンという名前は、両足をそろえて岩の上を跳びはねながら移動するようすからつけられました。

黒い頭に赤い目と赤いくちばし、目の上から横にのびる黄色い飾り羽をもつペンギンの顔のアップ
目の上の黄色い飾り羽(ミナミイワトビペンギン)写真: Ben Tubby(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

羽の生え変わり(換羽)

ペンギンは、古い羽毛を新しい羽毛に生え変わらせる「換羽(かんう)」をします。換羽のあいだは、水をはじく羽毛がそろわないため海に入れず、陸の上で何も食べずにすごす種もいます。ケープペンギンは毎年、陸に上がって21日間絶食し、そのあいだにすべての羽毛を生え変わらせます。換羽の前に十分に太れないと、死んでしまうこともあります。コウテイペンギンの換羽は約34日で、ほかの鳥にくらべて速く進みます。

首から胸の羽毛がぼさぼさに浮き上がった、白黒の顔のペンギンの上半身
羽が生え変わり中のフンボルトペンギン写真: Francis C. Franklin(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

どこにいる?(南極だけ? どこの国?)

野生のペンギンは、ほとんどが南半球にすんでいます。ただし、南極だけにいるわけではありません。南極大陸をおもな繁殖地にしているのは、コウテイペンギンとアデリーペンギンの2種です。ほかの種は、南極のまわりの島々や、南アメリカ、アフリカ南部、オーストラリア、ニュージーランドなどで子育てをします。大きな集団がいる国・地域は、南極のほか、アルゼンチン、チリ、南アフリカ、ナミビア、オーストラリア、ニュージーランドなどです。

温かい地域にすむペンギンもいます。南アメリカのペルーやチリの沿岸にはフンボルトペンギン、アフリカのナミビアや南アフリカの沿岸にはケープペンギンがすんでいます。ガラパゴスペンギンは、赤道直下のガラパゴス諸島にすみ、赤道を少しこえた北半球にもすんでいます。こうした温かい地域の繁殖地は、冷たい海流(寒流)や、深い海からわき上がる冷たい水が流れこむ海に面しています。冷たく栄養の豊かな水が、えさの魚を集めるのです。

青い海と大きな岩にかこまれた白い砂浜に、たくさんの白黒のペンギンが立っている
南アフリカの浜辺のケープペンギン写真: Krigore(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

青い海面にうかんで泳ぐ、黒い頭に白い線のある小さなペンギン
赤道直下にすむガラパゴスペンギン写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

北極には、野生のペンギンはいません。日本にも野生のペンギンはおらず、日本で見られるのは、動物園や水族館で飼われているペンギンです(あとの「日本のペンギン」で説明します)。

何を食べる? どこまで潜れる?(泳ぎの能力)

ペンギンは肉食で、オキアミなどの甲殻類、魚、イカのなかまを、海の中でとらえて食べます。くちばしでくわえた獲物は、泳ぎながら丸のみにします。何を多く食べるかは種や地域でちがい、コウテイペンギンはおもに魚を食べ、ミナミイワトビペンギンは甲殻類を集中して食べます。

アデリーペンギン96〜116羽の動きを同時に記録した2026年の研究では、ペンギンは多くの場合、自分が前に行った場所を手がかりにえさ場を選んでいました。ただし、17.1%の旅では、いっしょに出発したなかまが前に使った場所が、行き先を予測するのに役立ちました。前回うまくえさをとれなかったペンギンほど、えさ場を変えることが多く、なかまの経験にたよっていました。

ペンギンの胃からは、小石が見つかることがあります。もぐるときの浮力の調節や、消化を助けるために飲みこむと考えられてきました。2023年に報告された日本の研究では、飼育されているフンボルトペンギンを観察したところ、小石を飲みこむのは産卵期のメスだけで、その多くが卵の殻をつくる時期に集中していました。研究者は、殻に必要なカルシウムをとろうとして、まちがって小石を飲みこんでいる可能性があると考えています。

ナゾロジーでくわしくペンギンの胃から見つかる石は何のためか?

水の中を飛ぶように泳ぐ

ペンギンが上手に泳げるのは、体が水の抵抗の少ない流線形で、つばさがかたく平たいフリッパーになっているからです。泳ぐようすは、空を飛ぶ鳥にそっくりです。コウテイペンギンは、つばさを打ち下ろすときだけでなく、打ち上げるときにも水をおして進みます。マカロニペンギンの解剖では、胸の筋肉の一つ(烏口上筋)が、空を飛ぶ鳥にくらべて大きいことも確かめられています。

ペンギンのなかでも特に速いとされるジェンツーペンギンは、水の中で時速36kmに達します。オウサマペンギンなどは、息つぎをしながら速さを保つために、イルカのように水面を跳ねながら泳ぐこともあります。水から陸へ上がるときには、いったん深くもぐって勢いをつけ、水面から飛び上がります。

氷のふちの海面から、フリッパーを広げて雪の上へ飛び出すコウテイペンギン。後ろにはなかまがならんでいる
海から氷の上へ飛び上がるコウテイペンギン写真: Christopher Michel(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

どこまで潜れる?

小さなペンギンは、ふつう深くはもぐらず、水面の近くで獲物をとります。1回のもぐりは、たいてい1〜2分ほどです。大きなペンギンは深くもぐることができ、ジェンツーペンギンは170〜200m、オウサマペンギンは300mより深くまでもぐります。コウテイペンギンは鳥のなかでもとくに深くもぐり、1994年には水深564mまでもぐった記録があります。ふだんの1回の潜水は2分半〜4分ほどですが、動物に記録計をつける調査(バイオロギング)では、32分もぐっていた例も観測されています。

ペンギンは、肺で空気を吸って呼吸します。もぐっているあいだは息を止め、息つぎのために水面にもどります。コウテイペンギンは、もぐっているあいだ心臓の拍動を1分間に15〜20回までへらし、すぐには必要でない臓器の働きを止めて、酸素を節約します。骨は中に空気のない、つまった骨で、深くもぐって水圧が水面の40倍ほどになっても、骨が傷つく心配がありません。

血液にもくふうがあります。2021年の研究では、ペンギンの祖先が水にもぐるくらしに特化したころに、血液中のヘモグロビンが酸素とくっつきやすく変化したことが分かりました。同時に、まわりが酸性になると酸素を手放しやすくなる性質(ボーア効果)も強まりました。肺から酸素をたくさん取りこみ、体のすみずみには、しっかり届けられるしくみです。

ナゾロジーでくわしく30分も海に潜れるペンギンは血中ヘモグロビンが進化していた

なぜ飛べない?(飛べなくなった理由)

ペンギンは、6000万年以上前に、空を飛ぶ力を失ったと考えられています。ニュージーランドでは、約6250万〜5800万年前の、とても古いペンギンの化石が見つかっています。これらのペンギンもすでに飛べず、短いつばさは、深くもぐるのに向いた形でした。

なぜ飛べなくなったのかについては、「水の中を進むのに向いたつばさは、空を飛ぶのに向かない」という考えが有力です。2013年の研究では、つばさで空を飛び、つばさで水にもぐって泳ぐこともできる海鳥、ハシブトウミガラスを調べました。ハシブトウミガラスが飛ぶときに使うエネルギーは、脊椎動物でこれまでに記録された中でもいちばん高い値でした。研究者は、もぐるのに合わせてつばさの形を変えていくと、飛ぶためのエネルギーが大きくなりすぎ、ペンギンのような大きな海鳥では、飛ぶことをやめたと考えています。

2022年のゲノムの研究では、ペンギンとミズナギドリのなかまは、鳥のなかで、これまでに調べられた中でもっとも進化の速さがゆっくりなことも分かりました。

大昔には巨大なペンギンも

化石からは、昔は今よりもっと多くの種類のペンギンがいたことが分かっています。約4000万〜3000万年前には、巨大なペンギンのなかまがいました。ノルデンショルトジャイアントペンギン(アンスロポルニス)は、背の高さが1.8m近くあったと考えられています。

2023年には、ニュージーランドの約5950万〜5550万年前の地層から見つかった化石が、新種クミマヌ・フォーダイセイ(Kumimanu fordycei)として報告されました。上腕骨の大きさから、体重は148〜160kgほどと推定され、これまでに知られている中で、いちばん大きなペンギンだったかもしれません。ペンギンは、進化の歴史のとても早い時期に、すでに大きな体になっていたことを示しています。

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寒さに強いくらし(何度まで耐えられる?)

南極のペンギンは、きびしい寒さにたえるしくみをもっています。コウテイペンギンでは、体の熱を逃がさない力の80〜90%を、密に生えた羽毛がになっています。皮ふの下には、繁殖の前には厚さ3cmにもなる脂肪の層があります。陸の上では羽毛を立てて肌のそばに空気の層をつくり、水の中では羽毛をねかせて、肌がぬれないようにしています。

つばさのつけ根にも、くふうがあります。体から出ていく温かい血液と、つばさから戻ってくる冷たい血液がすぐそばを流れ、冷えた血液があたためられてから体にもどるのです。このしくみは、温かい地域にすむ種もふくめて、今のどのペンギンにもあり、つばさから熱が逃げるのをおさえています。

コウテイペンギンは、まわりの気温が−10〜20℃のあいだなら、エネルギーを余分に使わなくても体温を保てます。それより寒くなると、体の中でつくる熱をふやして体温を保ちます。逆に20℃をこえると、体温が上がって落ち着かなくなり、つばさを広げて熱を逃がします。

ハドル(体を寄せ合って寒さをしのぐ)

コウテイペンギンが子育てをする真冬の南極では、気温が−40℃まで下がり、風速が時速144kmに達することもあります。そこでコウテイペンギンは、10羽から数百羽が体をぴったり寄せ合う「ハドル」をつくって、寒さをしのぎます。風上の外側にいるペンギンは、群れのふちを少しずつ回って風下側に加わるので、群れ全体がゆっくり動き、どのペンギンも順番に内側と外側を交代します。

暑い場所のペンギンは?

赤道直下のガラパゴス諸島は、気温が15〜28℃ほどです。ここにすむガラパゴスペンギンは、暑さをしのぐくふうをしています。体を冷やすおもな方法は、水に入ることです。いちばん暑い時間には、口を開けてハアハアと息をしたり、日かげに入ったりして体温を調節します。体の脂肪の層が薄く、体が小さいことも、熱を逃がすのに役立っています。

ペンギンのくらし(歩き方・鳴き声・眠り方)

よちよち歩きとトボガン(腹ばいすべり)

陸の上では、体を左右にゆらしながら、よちよち歩きます。氷や雪の上では、おなかを下にして寝そべり、足でけって進む「トボガン(腹ばいすべり)」もします。トボガンは、エネルギーを節約しながら速く移動できる方法です。急な場所や岩場では、両足をそろえて跳ねて進みます。

雪の上で、おなかを下にして寝そべり、すべって進む2羽のペンギン
おなかですべるヒゲペンギン(トボガン)写真: Liam Quinn(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons

ペンギンは人をとくにこわがらず、人の集団に近づいてくることもよくあります。南極やそのまわりの島には、キツネのような、陸にすむ肉食のけもの(哺乳類)がいないためと考えられています。ただし、2.7mほどより近づくと落ち着かなくなるようです。まっすぐ立ってよちよち歩く姿や、泳ぎのうまさ、人をこわがらないことから、ペンギンは多くの人に親しまれています。

天敵

おとなのペンギンは、海の中で、ヒョウアザラシやシャチ、サメなどにおそわれます。卵やヒナは、トウゾクカモメやオオフルマカモメなどの鳥にねらわれます。

鳴き声で家族を見分ける

ペンギンは、混み合ったコロニー(集団繁殖地)の中で、親とヒナがおたがいを見つけるのに、声を使います。決まった場所に巣をつくらないコウテイペンギンでは、つがいの相手や親子を見分ける手がかりは声だけで、1羽ごとの声のちがいがとても大きいことが知られています。海からもどったメスは、何百羽ものオスの中から、声で自分のつがいの相手を見つけます。

ケープペンギンは、ロバに似た声で鳴くため、英語でオスのロバを意味する「ジャッカスペンギン」とも呼ばれます。2020年の研究では、ケープペンギンが相手を見分けたり求愛したりするときの歌に、人の言葉と同じ2つの法則が見つかりました。よく使う音ほど短い(ジップの法則)、長い歌ほど、歌をつくる音の平均の長さが短い(メンツェラート・アルトマンの法則)、というものです。霊長類以外の動物の声で、この法則が確かめられたのは初めてでした。

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眠り方(どこで寝る?)

南極で巣にいるヒゲペンギンの脳波を調べた2023年の研究では、ヒゲペンギンは1日に1万回以上もうとうとしていました。1回の眠りは平均でたった4秒ほどですが、合計すると、左右の脳それぞれで11時間以上眠っていたのです。巣にいるペンギンは、卵をねらう鳥や、ほかのペンギンからの攻撃に、いつも気をつけていなければなりません。数秒ずつの眠りを積み重ねることで、まわりを見張りながら眠りをとっていると考えられています。

黒っぽい岩の海岸に立つ、白い顔とあごの下に細い黒い線があるペンギンの全身
ヒゲペンギン写真: Godot13(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

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寿命と増え方(子育て)

寿命は、種によってちがいます。野生のコウテイペンギンは、おとなの平均の寿命が約20年(19.9年)で、生まれたうちの1%ほどは50歳まで生きる可能性があると推定されています。ケープペンギンは野生で10〜25年ほど生き、飼育下では34年生きた例があります。小さなコビトペンギンは、平均すると6.5年ほどです。

飼育下では、長崎水族館と長崎ペンギン水族館で、オウサマペンギンの「ぎん吉」が39年9か月15日にわたって飼育された記録があります。ぎん吉は野生で生まれ、日本に来たときにはすでにおとなだったので、実際には40歳以上だったと考えられています。

2026年の研究では、動物園で飼われているオウサマペンギンのオスは、野生のものより長生きする一方で、DNAの化学的な目印(エピジェネティクス)から見た「体の年齢」は、一生を通じて速く進んでいることが分かりました。

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卵と子育て

ペンギンの多くは、大きな集団(コロニー)をつくって子育てをします。コロニーの大きさは、ジェンツーペンギンの100つがいほどから、オウサマペンギンやマカロニペンギン、ヒゲペンギンの数十万つがいまでさまざまです。多くの種は一度に2個の卵を産み、オスとメスが交代で温めます。体の大きなコウテイペンギンとオウサマペンギンは、卵を1個だけ産みます。オウサマペンギンは、卵を足の上にのせ、おなかの皮のたるみでつつんで温めます。

小石の浜に立つ、頭が黒く、ほおと胸の上がオレンジ色のペンギンの全身
オウサマペンギン(キングペンギン)写真: Godot13(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ペンギンは、1回の繁殖期のあいだ、同じ相手とつがいになります。ただし、次の年も同じ相手とペアになる割合は種によって大きくちがい、コウテイペンギンでは15%ほどです。コビトペンギンを13回の繁殖期にわたって調べた2025年の研究では、繁殖期の前の「離婚」が少ない年ほど、卵がかえる割合やヒナが巣立つ割合が高くなっていました。

イワトビペンギン属(マカロニペンギン属)のペンギンは、ふつう2個の卵を産みますが、はじめに産んだ卵は小さく、育たずに終わることが多いことが知られています。1998年に行われたマユダチペンギンの調査では、1個目の卵は2個目よりずっと小さく、多くが2個目が産まれる前か当日に失われ、2個目が産まれてから7日より長く残ったものはありませんでした。

コウテイペンギンの子育て

ほとんどのペンギンは春から夏に子育てをしますが、コウテイペンギンは、南極の冬に子育てをします。3〜4月、コウテイペンギンは氷の上を50〜120kmほども歩いて、繁殖地に集まります。5月から6月はじめにメスが450〜470gほどの卵を1個産むと、卵をオスにわたし、えさをとりに海へもどります。

オスは卵を足の上にのせ、おなかの皮のたるみ(抱卵嚢)でつつんで、65〜75日ほど温め続けます。オスだけが卵を温めるのは、ペンギンのなかでコウテイペンギンならではの子育てです。オスは繁殖地に着いてから110〜120日ほど何も食べずにすごし、体重は最大で20kgほどへります。メスがもどる前にヒナがかえると、オスは食道から出す栄養たっぷりの液(ペンギンミルク)をヒナに与えます。

その後は、もどってきたメスとオスが交代で海へ行き、ヒナを育てます。ヒナがかえって40〜50日ほどたつと、ヒナだけで集まる「クレイシ」をつくり、両親はそろってえさをとりに出かけます。クレイシは、フランス語で「託児所」を意味する言葉です。

名前の由来と人とのかかわり

「ペンギン」は何語?(語源と漢字)

「ペンギン(penguin)」という言葉は、16世紀の終わりごろ、英語かオランダ語の文献に初めて現れます。もとは、北大西洋にいた飛べない海鳥、オオウミガラスを指す名前でした。南半球を探検したヨーロッパの人びとが、オオウミガラスによく似た鳥を見つけて、同じ名前で呼んだのが、今のペンギンです。ただし、オオウミガラスはウミスズメのなかまで、ペンギンとは近い関係ではありません。

言葉のもとについては、ウェールズ語の pen gwyn(白い頭)からきたという説と、ラテン語の pinguis(太った、脂)からきたという説があり、まだはっきりしていません。オオウミガラスは、羽毛などを目当てにした人による乱獲で数をへらし、1844年6月3日に、アイスランド沖の島で、卵を温めていた最後のつがいが殺されました。その後、1852年の目撃を最後に記録がとだえ、絶滅しました。それにともなって、「ペンギン」は南半球の鳥だけを指すようになりました。

漢字では「人鳥(じんちょう)」や「企鵝(きが)」と書きますが、今ではほとんど使われません。人鳥は、歩くようすが人のように見えることから、企鵝の「企」はつま先で立つこと、「鵝」はガチョウを意味します。科の学名 Spheniscidae は、ギリシャ語で「くさび」を意味する言葉がもとで、ケープペンギンのフリッパーの形からつけられました。コウテイペンギンとオウサマペンギンの属名 Aptenodytes は、古代ギリシャ語で「つばさのない潜水者」という意味です。

日本のペンギン(どこで見られる?)

日本には野生のペンギンはいませんが、全国の動物園や水族館で見ることができます。日本で初めて飼われたペンギンは、1915年に上野動物園に寄贈されたフンボルトペンギンとされます。1996年の時点で、日本では約2,400羽のペンギンが飼われ、そのうちフンボルトペンギンが70施設で1,162羽でした。フンボルトペンギンやケープペンギン、マゼランペンギンのように温かい地域のペンギンは、氷や雪を好まず、屋外で飼うことができます。フンボルトペンギンは、日本の気候で飼いやすいこともあり、動物園や水族館でよく見かけます。

第二次世界大戦のあとには、日本の捕鯨船が南極の海でペンギンをつかまえて持ち帰り、各地の動物園や水族館で飼われました。前に出てきた「ぎん吉」も、捕鯨船で日本に来たペンギンです。ぎん吉が暮らした長崎市の長崎ペンギン水族館(前身は1959年に開館した長崎水族館)では、9種のペンギンが飼育されています。コウテイペンギンは、名古屋港水族館と、和歌山県のアドベンチャーワールドで飼育されていて、アドベンチャーワールドでは卵をかえすことにも成功しています。

青い水の中を、フリッパーを広げ、泡を引きながら泳ぐジェンツーペンギン
長崎ペンギン水族館で泳ぐジェンツーペンギン写真: Ken FUNAKOSHI(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons

つばさを左右に広げて立つ、胸に黒い帯と黒い斑点のあるペンギンの全身
フンボルトペンギン写真: Thomas Tolkien(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

フンボルトペンギンのように、ワシントン条約で国をこえた取り引きがきびしく制限されている種もいます。手に入れるのがむずかしいうえ、たくさんのえさや水、温度の管理が必要で、においや鳴き声も大きいため、ペットとして家で飼うことはとてもむずかしい動物です。

数をへらすペンギン

今いるペンギンの多くの種は、数がへっています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでの評価は、種によって「低懸念」から、もっとも絶滅のおそれが高い「近絶滅種」までさまざまです。昔は肉や油をとるためにつかまえられたこともありましたが、今は、ごみや船の事故による油の流出などの海の汚染、温暖化による海氷の減少などが、ペンギンをおびやかしています。

アフリカ南部のケープペンギンは、2024年に「近絶滅種」に引き上げられました。南アフリカのケープタウンの北にある2つの島では、おもなえさのマイワシが大きくへった2004〜2011年に、2004年に繁殖した親の約95%にあたる約6万2000羽が、えさ不足で死んだと推定されています(2025年の研究)。換羽の前に十分に太れなかったことが、多くの死の原因と考えられています。

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コウテイペンギンは、海氷がとけることで、子育てをする場所を失うおそれがあります。世界のコウテイペンギンの約3分の1がすむ地域を、衛星写真で調べた2025年の研究では、調べた期間に数が22%(1年あたり1.6%)へったと推定され、これまでの予測よりも速いペースでした。南極では、ふんで氷が色づいた場所を衛星写真で探すことで、新しいコロニーも見つかっています。

よくある疑問

ペンギンは鳥? 何類?
ペンギンは鳥類です。分類では「ペンギン目ペンギン科」に入ります。空を飛ぶことはできませんが、体が羽毛でおおわれ、くちばしをもち、卵を産むなど、鳥の特徴をそなえています。つばさは、泳ぐための「フリッパー」に変わっています。鳥のなかでは、ミズナギドリのなかまに近いとされます。
ペンギンはなぜ飛べないの?
つばさが、水の中を進むのに向いた、かたく平たいフリッパーに変わっているためです。水の中で羽ばたくのに向いたつばさは、空を飛ぶのには向きません。つばさで飛ぶことも泳ぐこともできる海鳥を調べた2013年の研究では、飛ぶのに使うエネルギーがとても大きく、もぐるのに合わせてつばさを変えていくと、大きな海鳥では飛ぶことをやめるほどになると考えられました。ペンギンは、6000万年以上前に飛ぶ力を失ったとされています。
ペンギンは何種類いる?
数え方によって、17〜19種とされます。これらは、6つの属(近いなかまのまとまり)に分けられています。いちばん大きいのはコウテイペンギン、いちばん小さいのはコビトペンギンです。日本の動物園や水族館で多く飼われているのは、南アメリカにすむフンボルトペンギンです。
ペンギンはどこに住んでいる? 南極だけ?
野生のペンギンは、ほぼ南半球だけにすんでいます。南極だけでなく、南極のまわりの島々や、南アメリカ、アフリカ南部、オーストラリア、ニュージーランドなどの海岸にもすみます。南極大陸をおもな繁殖地にしているのは、コウテイペンギンとアデリーペンギンの2種です。赤道直下のガラパゴス諸島にも、ガラパゴスペンギンがすんでいます。北極や日本には、野生のペンギンはいません。
ペンギンの寿命は? 何年生きる?
種によってちがいます。野生のコウテイペンギンは、おとなの平均の寿命が約20年で、50歳まで生きるものもいると推定されています。ケープペンギンは野生で10〜25年ほど、小さなコビトペンギンは平均6.5年ほどです。飼育下では、日本の長崎で39年あまり飼育されたオウサマペンギン「ぎん吉」の記録があり、実際の年齢は40歳以上と考えられています。
ペンギンは何度まで耐えられる?
コウテイペンギンは、気温が−40℃まで下がる真冬の南極で子育てをします。まわりの気温が−10〜20℃のあいだなら、エネルギーを余分に使わずに体温を保てます。それより寒いと体の中でつくる熱をふやし、なかまと体を寄せ合う「ハドル」で寒さをしのぎます。一方、20℃をこえると体温が上がって落ち着かなくなります。気温が15〜28℃ほどの赤道直下のガラパゴス諸島にすむ、ガラパゴスペンギンのような種もいます。
ペンギンはどこまで潜れる? 何分もぐれる?
種によって大きくちがいます。小さなペンギンは、ふつう水面の近くで1〜2分ほどもぐります。ジェンツーペンギンは170〜200m、オウサマペンギンは300mより深くまでもぐります。コウテイペンギンはとくに深くもぐり、水深564mの記録があります。ふだんの1回の潜水は2分半〜4分ほどですが、32分もぐっていた例も観測されています。
ペンギンはなぜ臭いの?
においのもとの一つは、ふん(グアノ)です。ペンギンのコロニーには、ふんがたくさんたまり、南極では、ふんで氷が色づいた場所が衛星写真で見えるほどです。2025年の研究では、南極の沿岸で、ペンギンのコロニーが、鼻をつくにおいの気体であるアンモニアの大きな発生源になっていることが確かめられました。ペットとして飼うのがむずかしい理由の一つにも、においが挙げられています。

ナゾロジーで読む29本

  1. 01 エサを探すペンギンは「まず自分で考え」「失敗したら仲間の情報に頼る」と判明
  2. 02 ペンギンの「よちよち歩き」を支える謎の筋肉――100年の時を経てついに発見か
  3. 03 快適すぎる生活は逆に「老化を加速させてしまう」可能性
  4. 04 ペンギンの卵を茹でると「透明なゆで卵」になる!
  5. 05 南アフリカ沖のペンギンが8年で95%減少、原因は「餓死」

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参考文献

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表紙の写真: Giuseppe Zibordi(NOAA Corps Collection)(Public domain) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。