潜水に特化しすぎたことがアダに?
研究チームは今回、現代の水鳥における「潜水」の進化に焦点を当て、それが水鳥の形態的特徴・多様性を高める種分化率・種の絶滅のしやすさにどんな影響を与えているかを調査しました。
まず、系統樹における遺伝子分析の結果、潜水は少なくとも14回独立して進化していることが判明。
加えて、一度潜水能力を獲得したグループは、その後の進化の中で潜水能力を失うことはありませんでした。
ただ、潜水する水鳥と一括りで語りましたが、この中にも体サイズや潜水のタイプにいくつか異なる進化の形態があることが示されています。
たとえば、ペンギンやパフィンのように翼を使って潜水する「ウィング・ダイバー(Wing diver)」は、水中を泳ぐのに適した大きな体格を持つ傾向がありました。
それから、川鵜やカイツブリのように足を使って潜水する「フット・ダイバー(Foot diver)」も同様に、水面を漂ったり泳ぐのに適した大きな胴体を発達させています。
一方で、カモメやカツオドリのように空から水中に飛び込む「プランジ・ダイバー(Plunge diver)」は、泳ぐよりも飛ぶことに適しているため、体を細くしたり軽くして、サイズがより制限される傾向にありました。
※ プランジ(plunge)=突っ込む、飛び込むの意
本研究では、こうした潜水する鳥の中でもペンギンのような「ウィング・ダイバー」が潜水しない鳥と比べて種分化率(種の多様性の向上)が低いことがわかり、多様性が低下していて絶滅しやすい状態にあることが示されました。
その理由として、バース大の進化生物学者で研究主任のジョシュア・タイラー(Joshua Tyler)氏は「これらの水鳥の生態が潜水という採餌戦略に高度に特化しすぎている」ことを指摘します。
「たとえば、ペンギンは魚雷のような体型で水中を速く移動し、狩りをすることができますが、空は飛べず、陸上でもそれほど上手く動けません。
つまり、彼らは他の環境や食事に柔軟に適応することができないのです」
一方で、カモメやカツオドリのようなプランジ・ダイバーは、狩りを潜水だけに特化させていません。
彼らは水中の魚から海辺に佇む人のパンを盗むことまで、何でも食べる雑食家であり、種の多様性もペンギンたちより顕著に高いことが分かっています。
つまり、環境や食事の変化に柔軟に適応できるため、絶滅リスクはそれほど高くないのです。
タイラー氏は「ペンギンのように一つに特化しすぎた種は、将来の絶滅という点でよりリスクがあり、”進化の袋小路(evolutionary dead end)”に直面している可能性がある」と述べています。
現在、世界的な気候変動によって、ペンギンを含む多くの生物たちに新たな進化的圧力がかかっていることを考えると、これは懸念すべき問題です。
チームは本研究の成果が、将来的に最も絶滅の危険性の高い水鳥の種を予測することで、保護活動への情報提供に役立つことを期待しています。
ただ、今回の報告は現状ペンギンのような潜水する鳥から陸上や空へ適応した逆戻りの進化が見られないことを根拠としているため、1つでも逆転した進化の事例が見つかれば理論が崩壊します。
研究者はその事実も含めて、今回の研究がとても興味深い報告であると述べています。