南半球に広く生息するペンギンの歴史は古く、最古のペンギン(ワイマヌ・マネリンギ)は6200万年前まで遡ります。
それから現代にいたるまでペンギンは、南半球を中心に進化を遂げてきました。北半球に最も近い場所にいるのは、ガラパゴスペンギンのみです。
ところが最新研究で、3700万年前の北半球に、太古のペンギンと瓜ふたつの生物が存在したことが明らかになりました。
その生物は「Plotopterid」という飛べない鳥類で、日本、アメリカ、カナダで化石が見つかっています。
種が違うのに瓜ふたつ
北半球に存在したPlotopteridの生息年代は、最古のペンギンよりずっと遅く、約3700〜3400万年前と言われています。また、現代まで生きるペンギンとは異なり、少なくとも2500万年前には絶滅しました。
研究では、Plotopteridの化石を、カンタベリー博物館(ニュージーランド)所蔵のワイマヌ・ムリワイマヌ・セキワイマヌといった太古の巨大ペンギンの化石と比較しています。
ワイマヌ種は、約6000万年前のニュージーランド付近に生息したペンギンで、全長1.6メートルを超えるものもいました。本調査では、ニュージーランド・カンタベリー北部の町ワイパラで出土した9種の古代ペンギンの化石を用いています。
調査の結果、Plotopteridとワイマヌペンギンは、異なる時代・場所に生きたにもかかわらず、骨格や身体的特徴が非常に酷似していることが判明しました。
Plotopteridも全長1.5メートルを超える巨体で、長いくちばしに切れ目のような鼻孔、胸や肩、骨、翼の構造までペンギンの骨に近似していました。こうした特徴から、ともに泳ぎを得意とし、深い水域まで潜って狩りをしていたようです。
また、両者ともエサを求めて空中から水中に飛び込む習性を持っていた飛翔生物が祖先であった可能性が高く、時間の経過とともに、この祖先は泳ぎが得意になり、逆に空を飛べなくなっていったと思われます。
カンタベリー博物館のポール・スコフィールド博士は「両者は時代も場所も大きく違うのに、はた目からパッと見ただけではまったく区別がつかなかったでしょう。しかし、Plotopteridは、ペンギンのような見た目ですが、決してペンギンではないのです」と話します。
実際、Plotopteridは、鵜やカツオドリと近縁であることが分かっています。つまり、Plotopteridとペンギンは、お互いの酷似した特徴をそれぞれ独自に進化させたのです。
これは「収束進化(convergent evolution)」と呼ばれるもので、遠縁にある生物が同じ環境下に置かれたとき、似たような形態的進化をすることです。例えば、モグラと昆虫のケラはまったく違う種類なのに、同じ前足を発達させています。
当時の地球は現在と環境が大きく違っていたので、それが収束進化を生む原因となったのかもしれません。
研究の詳細は、6月29日付けで「Zoological Systematics and Evolutionary Research」に掲載されました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jzs.12400
最新の科学技術やおもしろ実験、不思議な生き物を通して、みなさんにワクワクする気持ちを感じてもらいたいと思っています。
Nazologyについて
記事一覧へ