音の学習はいつ始まるのか?
動物の中には、さまざまな発声が可能で、発声学習によって種族の発声パターン(歌や言語)を学んで発声するものと、もともと種族固有の音しか出せない発声非学習のものが存在します。
ヒトの言語や鳥の歌などは、親などの発声パターンを真似する発声学習によって後天的に獲得されたものです。
そしてこの、発声学習をする生き物は鳥類・哺乳類の中で、霊長類・鯨類・鰭脚類(ききゃくるい)・コウモリ・鳴禽類(めいきんるい)・オウム・ハチドリのわずか7つしかいません。
なお霊長類の中で、発声学習ができるのは人間だけです。
こうした生き物たちは自分の種族以外の音も真似して発することができるため、自分の種族の正しい音を早い段階で認識している必要があります。
特に鳥たちは生まれた瞬間から自分たちの親の声を理解している節があり、それ以外の騒音とは区別できているようです。
しかし、殻を破って外へ出た瞬間に、正しい種族のメロディーが聞こえてくるとは限りません。
近年の研究では、生まれたあとに繰り返し聞くことで種固有の音を学ぶという発声学習のこれまでの考え方は単純すぎるのではないか? という提言もされています。(Petkov et al.,2021)
また、歌の指導を受けなかった鳴鳥でも、自分の種の音と、異なる種の音には異なる神経反応を起こすことが示されています。
このことから、今回の研究者たちは、鳥たちが卵から孵化するかなり前の段階で脳内に「音声テンプレート」を取得しているのではないか? と考えました。
そこで、研究チームは2012年から2019年までの7年間で、5つの異なる種類の鳥たちの卵にさまざまな鳴き声を聞かせる実験を行いました。
調査された中の2種は、ウズラとペンギンで、これはどちらも発声非学習の鳥ですが、残りは発声学習を行う鳥でした。