卵の殻の中で親の声に反応していた鳥たち
研究では、非侵襲的な方法によって卵の中の胚の状態のヒナの心拍数が測定されました。
ここから、どういった音に過敏に反応しているかを調査したのです。
すると、発声学習をする種は卵の段階で、自分たちの種の鳴き声に応答していることが示されたのです。
最近の研究では、キンカチョウが、卵のときに親鳥がどのように鳴いていたかが、成人期の行動に影響するということが示されており、これは予想されていた結果でした。
一方、発声非学習の鳥はそのような頭脳を持っているようには見えません。
では、彼らは卵の中で特になんの音も聞いていないのでしょうか?
そこで、研究はさらに発声非学習の鳥についても同じような実験をしてみました。
すると、この鳥たちも親鳥の声には注意を払っている測定結果が出たのです。
つまり、鳥たちは音を学習する種もそうでない種も関係なく、外の音を聞き、親の声に慣れるように訓練をしていたのです。
これまで発声学習をする種とそうでない種で、音の知覚をするしないははっきり分かれていると考えられていました。
しかし、実際はそんな明確な区別はなく、鳥たちは卵の中で音を聞き生まれたあとに外の音に慣れるための準備をしていた可能性があります。
たとえば、カモメは孵化する前の卵の状態でも、親鳥の発する警告の鳴き声に反応することがいくつかの研究で示されています。
さらにこうした経験を卵のうちに持っていたヒナは、生まれたあとも警告する鳴き声への反応が他のヒナより強くなる傾向があったといいます。
今回の研究は鳥に関するものですが、生物は生まれる前の段階から、既にさまざまな外の世界に対する学習が始まっていると考えられます。
これが成人期の行動にまで影響するかどうかはまだ不明ですが、生き物の学習行動は、想像されていたよりもずっと複雑で、その開始時期はとても早いものだったようです。