4500万年前に起きた「カエル大量死」の謎
ドイツ中央部ガイゼルタール地方は、古くから化石の宝庫として知られていました。
この地方にはかつて広大な沼地が広がっており、馬・鳥・コウモリ・魚・カエルを含む様々な動物たちが死んだ際、沼地の泥が遺体を速やかに覆うことで良好な化石として未来に送り届ける機能を果たしたのです。
しかし数々の化石の中には、どのような状況で死亡したのかわからないものも存在しました。
特に4500万年前の地層から見つかった何百匹にも及ぶカエルたちの化石群は大きな謎でした。
馬や鳥ならば、泥や水に足をとられて群れ単位で溺れ死ぬことは考えられますが、水かきを持ち皮膚呼吸能力に優れるカエルが集団で死亡するには、何か特別な理由があったはずです。
これまでの研究では、寒さ・乾燥・水中の酸素不足などの説が唱えられてきましたが、どれも推測の域を出ませんでした。
そこでアイルランド国立大学コーク校の研究チームが2022年に、発掘されたカエルたちの化石の状態をもとに、大量死の原因を解明することにしたのです。
するとカエルたちの化石のかなりの部分が、体全体のパーツがそろった完全性の高い化石であり、骨にも傷が少ないことが判明します。
つまりカエルたちの死体は生前も死後も損傷を受けてはいなかったのです。
研究主任のダニエル・フォーク氏は「カエルの骨には捕食者に襲われたり死肉を漁られたような痕跡(傷)はなかった」と述べています。
また地層や化石を分析したところ、カエルたちが大量死した時期に沼地が干上がったり大洪水が起きたという証拠も見当たりませんでした。
同様にプランクトンなどの大量発生により水中の酸素レベルが急激に低下という説も否定されました。
大量死したカエルたちは交尾の時期以外は水から上がって生活する「ヒキガエル」に属する種であり、特定の水域で酸素不足が起きたならば、別の場所に簡単に移動することができたからです。
つまり考えられる死因は環境変化や捕食者などではなかった可能性が高いのです。
では一体何がカエルたちに大量死を引き起こしたのでしょうか?