散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた
散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた / Credit:散りゆく大質量星の傍らで太陽系は生まれた—— 超新星爆発の年代をアルミニウム−チタン宇宙核時計で計測——
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散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた

2025.01.28 17:00:28 Tuesday

夜空を見上げて「私たちはどこから来たのだろう…」と考えたことはありませんか?

これまでの研究により、私たちの身体を形づくる原子は、実は遥か彼方の星々の中で作られたものだといわれます。

かの有名な天文学者カール・セーガンが “We are made of starstuff”(私たちは星の物質でできている)と語ったように、星が生まれ、進化し、爆発で散りゆく過程こそが、宇宙全体にさまざまな元素を供給する“源”だというわけです。

この壮大な「星のリサイクル工場」の中で、46億年前に太陽系は誕生しました。

しかし、どうやらその舞台は、思っていたよりにぎやかだったかもしれません。

東京大学の研究によって、太陽系誕生の直前にはすぐ近くに大質量星が存在し、激しい爆発(重力崩壊型超新星)を起こしながら、太陽系の赤ちゃん(原始惑星系円盤)に豊富な元素をもたらした可能性が示されました。

つまり、私たちの太陽系は「母なる大質量星」の“余熱”をたっぷり浴びて生まれた、いわば二世代目以降の産物ともいえるわけです。

今回は隕石という「46億年前のタイムカプセル」を手がかりに、太陽系のルーツを探る最先端の研究を紐解いていきます。

「アルミニウム-チタン宇宙核時計」という新しい技術が、太陽系に混ざり込んだ大質量星の痕跡を浮かび上がらせ、太陽系誕生の時期や場所をより正確に示してくれるのです。

いわば、太陽系誕生以前にすでに天に散った大質量星の「DNA」が、私たちの住む宇宙の片隅にしっかり残されていたのです。

「母なる大質量星」と、そこから受け継いだ私たちの太陽系の“星のかけら”たちがどのようにつながっているのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年1月24日に『The Astrophysical Journal Letters』にて公開されました。

散りゆく大質量星の傍らで太陽系は生まれた—— 超新星爆発の年代をアルミニウム−チタン宇宙核時計で計測—— https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10631/
Timescales of Solar System Formation Based on Al–Ti Isotope Correlation by Supernova Ejecta https://doi.org/10.3847/2041-8213/ada554

太陽系の起源となるガス雲は超新星爆発の傍らにありました

散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた
散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた / Credit:Canva . 川勝康弘

私たちの太陽系は、一つの「ぽつんとした星の卵」から静かに生まれたわけではないかもしれません。

むしろ、より大きな星々が集まる“にぎやかな星団”の中にあって、その中の大質量星が最後を迎える際のエネルギッシュな出来事――すなわち重力崩壊型超新星爆発――を経て誕生したと考えられています。

たとえばオリオン座大星雲を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

この星雲には若い星が密集しており、その中には太陽の何十倍もの質量を持つ巨星が大迫力で輝いています。

そうした“大きく、熱く、短命な星”は、寿命の終わりに超新星爆発を起こし、周囲のガスや塵を一気に吹き飛ばすのです。

では、なぜその“吹き飛ばし”が太陽系にとって重要なのでしょうか。

実は、この超新星爆発によって放出されるガスやダスト(塵)には、新たな星や惑星をつくるために欠かせない重元素や放射性元素が数多く含まれています。

今回の研究では、その中でもアルミニウム26やチタンの特定同位体が注目されました。

これらの物質は大質量星の中核や爆発過程で効率よく作られることがわかっています。

散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた
散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた / 太陽系は分子雲の重力収縮により形成された。この母分子雲には、近傍の大質量星の重力崩壊型超新星爆発で放出された26Alおよび46Tiと50Tiが混入した。原始太陽の周りに形成された円盤内の外側領域には、超新星爆発放出物がより多く含まれていたことが、隕石の分析から分かっている。やがて、円盤の内側領域では地球型惑星が、外側領域では木星型惑星が形成された。/Credit:散りゆく大質量星の傍らで太陽系は生まれた—— 超新星爆発の年代をアルミニウム−チタン宇宙核時計で計測——

たとえば「太陽の25倍ほどの質量をもつ恒星」は、その代表例だと言えます。

こうした大質量星は寿命が数百万~数千万年ときわめて短く、燃料を使い果たすと同時に内部が崩れ、激烈な超新星爆発を起こします。

その爆発で放出された物質が、近くの分子雲(星の卵となるガスのかたまり)に注入されると、そこで生まれようとしていた小さな星の材料を一気に“化学的に豊か”にするのです。

つまり私たちの太陽系も、この壮大な星の最期の“贈り物”を受け取った可能性が高いというわけです。

実際の観測でも、オリオン座やはくちょう座などの星形成領域には大質量星が多数存在し、互いに影響を及ぼし合いながら、新たな星や惑星が次々と生み出される様子が確認されています。

私たちの太陽系も、そうしたにぎやかな星団の中で“母なる大質量星”と運命をともにしたと考えられるのです。

この「大質量星の最後の輝き」は、太陽系の材料となるガスや塵を“こねて”くれたと表現してもよいでしょう。

そう想像すると、46億年前のドラマチックな舞台が目に浮かんできます。

そして、その証拠は隕石の中にしっかりと残されていたのです。

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