重力は「宇宙が巨大コンピューター」であることの証拠となる
重力は「宇宙が巨大コンピューター」であることの証拠となる / Credit:Canva
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重力は「宇宙が巨大コンピューター」であることの証拠となる

2025.04.30 17:00:48 Wednesday

重力といえばリンゴを木から落とすあの引力ですが、最新の研究ではまったく新しい見方が提案されています。

イギリスのポーツマス大学(UoP)のメルビン・ヴォプソン博士は、「重力は宇宙が情報を整理整頓する過程で生じる副産物ではないか」という大胆な仮説を打ち出しました。

簡単に言うと、宇宙そのものが巨大なコンピューターのように振る舞い、自身の中のデータをきれいにまとめようとする(情報を圧縮しようとする)結果として重力が生まれる、というのです。

このアイデアは一見突飛に思えますが、新たな研究ではその可能性が示されることになりました。

私たちが常識としてきた“万有引力”は本当に情報整理の副産物へと書き換えられてしまうのでしょうか?

研究内容の詳細は2024年03月14日に『AIP Advances』にて発表されました。

Is gravity evidence of a computational universe? https://doi.org/10.1063/5.0264945

もし重力がZIPだったら――引力に潜むシミュレーションのサイン

重力は「宇宙が巨大コンピューター」であることの証拠となる
重力は「宇宙が巨大コンピューター」であることの証拠となる / Credit:Canva

私たちの宇宙全体が巨大なシミュレーション、あるいはコンピューターであるという考えは、新しいものではありません。

これは哲学者からイーロン・マスクのようなテクノロジー業界の先見者まで、多くの思想家を魅了してきた、議論の的となっている仮説です。

この仮説の背景には、「情報の宇宙」という考え方があります。

近年、一部の科学者や思想家の間で、宇宙は情報でできておりコンピューターのように動作しているという仮説が語られています。

映画『マトリックス』で描かれたようなシミュレーション宇宙論を連想するかもしれませんが、情報物理学という分野のアプローチはやや異なります。

情報物理学では、物質やエネルギーと同様に「情報」も物理的な存在と捉え、宇宙の現象を情報の観点から説明しようとします。

情報力学第2法則はこの世界がシミュレーションであることを示している

ヴォプソン博士も以前から「情報には質量がある」「素粒子(物質の最小単位)はそれ自体が情報を保存している」といった研究を発表しており、現実世界をデータの集まりとして考える視点を追求してきました。

そんな中で提唱されたのが「情報力学の第二法則」という仮説です。

これは熱力学の有名な第二法則(エントロピー増大則)になぞらえたもので、時間が経つと宇宙の情報エントロピー(情報の乱雑さ)は維持されるか減少していくとされています。

噛み砕いて言えば、「宇宙では時間とともに情報が圧縮され、整理されていく傾向にある」ということです。

私たちの身の回りで考えてみると、パソコンがデータを圧縮してディスク容量を節約したり、一つのフォルダにファイルをまとめてZIPなどで圧縮してスッキリ管理したりするようなイメージに近いでしょう。

ヴォプソン博士らは、この情報圧縮の原則が宇宙全体で働いていると考えました。

もし宇宙が本当に「計算する存在」なら、余分な情報をどんどんまとめて処理を効率化しようとするはずだ——この考えが重力の新解釈につながっていきます。

確かに一つに固まった物体なら、その位置や運動を計算で追跡するのは簡単ですが、細々と分散した複数の物体をそれぞれ追いかけるのは(コンピューター的には)手間がかかります。

宇宙が“計算を楽にする”ために物質をまとめる方向に働くのだとしたら、重力という不思議な力にも情報論的な理由付けができるかもしれません。

しかし重力の正体が計算を楽にするために存在することをどのように立証したらいいのでしょうか?

次ページ「重力=宇宙のZIP機能説」――私たちは巨大コンピューターの中にいる?

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