ゴルフ場の近くに住むとパーキンソン病になりやすい?
パーキンソン病は、主に脳内のドーパミン神経細胞が減少することで起こる神経変性疾患です。
ドーパミンは運動をコントロールする重要な役割を担っているので、これが減少すると、手足の震えや筋肉のこわばり、動作の遅れなどの症状が起こることで知られています。
原因はまだはっきりと解明されていませんが、遺伝的な要因と環境要因の複合的な影響が指摘されています。
例えば、農業従事者や過去に工業活動が盛んだった地域に住む人々ではパーキンソン病のリスクが高い傾向がある、と先行研究で示唆されていました。
また実験室研究では、一部の農薬や大気汚染物質がドーパミン神経細胞に有害であることが示されています。
しかし人工化学物質がパーキンソン病の要因となる可能性がある一方で、遺伝的要因も影響している可能性があるため、現時点では決定的な証拠はありません。

そこで研究チームは今回、大量の農薬や化学物質が使用されていることで知られるゴルフ場と、パーキンソン病の発症リスクとの間に相関関係が見られないかどうかを調べました。
調査では1991年から2015年までの米国ミネソタ州とウィスコンシン州の27郡における住民データを使用し、419人のパーキンソン病患者と5,113人の健常者を比較。
彼らの自宅住所と周辺の139カ所のゴルフ場の位置情報を照合し、距離ごとに発症リスクを評価しました。
その結果、興味深いことに、ゴルフ場から約1.6~3.2km圏内に住んでいる住民は、約10km以上離れている住民に比べて、パーキンソン病の発症リスクが約3倍高いことが示されたのです。
またゴルフ場のある水道供給区域に住む人では、そうでない地域の人に比べて発症リスクが約2倍に上昇していました。
特に地下水汚染リスクが高い地域ではその傾向が強く、農薬の影響が疑われています。
この結果についてチームは「ゴルフ場からの農薬による地下水汚染や空気曝露のリスクを低減するための公衆衛生政策は、近隣住民のパーキンソン病リスクの低下につながる可能性がある」と述べています。
その一方で、この結果に懐疑的な意見を示す研究者もいます。