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三毛猫の毛色を決める遺伝子を特定 / Credit:Canva
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60年越しの謎に終止符!三毛猫の毛色を決める遺伝子の特定に成功【分かりやすく解説】

2025.05.16 11:30:42 Friday

「三毛猫はほとんどがメス」という話を聞いたことがあるかもしれません。

身近な存在でありながら、不思議な毛色を持つ三毛猫。

その体に広がるオレンジ、黒、白のパッチワーク模様は、なぜ生まれるのでしょうか。

そしてなぜ、オスの三毛猫はほとんど存在しないのでしょうか。

2025年5月、九州大学の研究チームがこの長年の謎に答えを出しました。

彼らは猫のX染色体上にある「ARHGAP36」という遺伝子領域に注目し、三毛猫のオレンジ色の毛に深く関係するDNAの変化を発見しました。

この研究成果は、2025年5月16日に科学誌『Current Biology』に掲載されました。

三毛猫の毛色を決める遺伝子をついに発見 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1261
A deletion at the X-linked ARHGAP36 gene locus is associated with the orange coloration of tortoiseshell and calico cats https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.03.075

三毛猫とサビ猫の毛色はどうやって生まれるのか?

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三毛猫 / Credit:Canva

「三毛とは、オレンジ(または茶)、黒、そして白の3を持つ猫を指します。

模様の出方はさまざまで、大きく分かれたパッチ模様の子もいれば、細かく散ったような柄を持つ子もいます。

この三毛模様は、実は「メスの猫」にほとんど限られる現象です。

オスの三毛猫は極めて珍しく、自然界では数万匹に1匹とも言われています。

一方、「サビ猫」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

サビ猫は、オレンジと黒の2色だけを持ち、白が入らない点で三毛猫と区別されます。

毛の色が混ざり合って、まるで錆びた鉄のような印象を与えることから、この名がつきました。

そしてこのサビ模様も、「メスの猫」にほとんど限られます。

どちらも見た目は個性的で、猫好きの間では人気のある柄です。

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サビ猫 / Credit:Canva

では、なぜ三毛やサビはメスに多いのでしょうか?

その鍵を握るのが「X染色体」と呼ばれる性染色体です。オス猫はXY、メス猫はXXの染色体を持っています。

実は、オレンジと黒の毛色を決める遺伝子はX染色体上に存在しています。

そして三毛とサビの背後には、「X染色体の不活性化」という仕組みが関係しているかもしれません。

これは、メスの細胞内で2本あるX染色体のうち1本がランダムに機能を停止するという、1961年に英国の遺伝学者メアリー・ライオン博士が提唱した仮説です。

猫の毛色は、細胞ごとにどちらのX染色体が活性化されているかによって決まり、それがパッチ状の模様として現れるというわけです。

この仮説は長年広く受け入れられてきました。

しかし、60年以上たった今でも、「オレンジ/黒の毛色を決める遺伝子」の正体やその働きについては明らかになっていませんでした。

そこで九州大学の研究チームは、オレンジ色の毛を持つ猫と持たない猫のDNAを比較する大規模な解析を行いました。

まず18匹の猫を対象にDNAを解析し、さらに国内外の50匹以上のデータも追加で検証しました。

ではその分析の結果、どんなことが見つかったのでしょうか。

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