なぜサイを密猟するのか?
サイの角は、私たちの髪や爪と同じ「ケラチン」でできています。
にもかかわらず、アジアやアフリカの一部地域ではいまだに「解熱や解毒に効く」などと信じられ、伝統薬や高級品として取引されています。
その価格は金やコカインを上回ることもあり、国際的な密輸ネットワークがサイの角を狙って動いています。
これにより、サイの中にはは今や絶滅危惧種に陥っている種もいるのです。

6年で2000頭近くが犠牲に
2025年の論文によれば、南アフリカにあるグレータークルーガー生態系の11保護区では、2017~2023年の間に1985頭のサイが密猟されました。
年間にしておよそ個体群の6.5%が失われていた計算です。
これは驚くべき数です。
しかも密猟者は銃や罠でサイを殺し、角だけを切り取って去っていくため、動物福祉の観点からも極めて深刻な問題となっています。
「守る」だけでは止められない
従来の対策は、警備員(レンジャー)の巡回、監視カメラ、追跡犬の導入、そしてアクセス制限など、いわゆる「法執行型」の対策が中心でした。
これらは密猟者の逮捕にはつながったものの、密猟そのものを減らす効果は統計的に確認されませんでした。
その背景には、地元の貧困、警察や保護区職員の汚職、そして法制度の不備(例えば逮捕されても保釈ですぐに出られること)といった構造的な要因が横たわっています。
つまり「リスクを高める」アプローチでは、密猟者の行動を止めるには不十分だったのです。