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Credit: University of Glasgow – Industrial waste is turning to rock in just decades, research reveals(2025)
geoscience

人工廃棄物が異常なスピードで「新種の岩石」と化していた

2025.06.18 12:00:51 Wednesday

イングランド北西部の海岸で、信じがたい現象が起きていました。

かつて鉄鋼産業で廃棄されたスラグ(金属を精錬する過程で出る副産物)が、わずか数十年のうちに“岩石”へと変化していたのです。

これまで、岩石は数千年あるいは数百万年という長い年月をかけて形成されるものと考えられてきました。

しかし英グラスゴー大学(The University of Glasgow)の最新研究で、人間が生み出した廃棄物は最短でわずか35年という異常なスピードで新しいタイプの岩石に変わっていたことが明らかになったのです。

この異常現象は、研究者たちによって「急速人為破砕的岩石サイクル(rapid anthropoclastic rock cycle)」と命名されています。

研究の詳細は2025年4月10日付で科学雑誌『Geology』に掲載されました。

Industrial waste is turning into a new type of rock at ‘unprecedented’ speed, new study finds https://www.livescience.com/planet-earth/geology/industrial-waste-is-turning-into-a-new-type-of-rock-at-unprecedented-speed-new-study-finds Industrial waste is turning to rock in just decades, research reveals https://www.gla.ac.uk/news/headline_1173682_en.html
Evidence for a rapid anthropoclastic rock cycle https://doi.org/10.1130/G52895.1

鉄鋼スラグが35年で岩石と化していた

この驚くべき発見の舞台となったのは、イングランド・カンブリア州のデアウェント・ハウ海岸です。

ここには19世紀から20世紀にかけて鉄鋼を生産していた工場群があり、その副産物であるスラグが2700万立方メートルも堆積されていました。

やがてこのスラグの山は風雨や波によって削られ、まるで自然の崖のような姿を見せ始めました。

しかし、研究者たちがその崖に埋め込まれた人工物を詳細に調べたところ、信じがたい事実が判明します。

1934年の硬貨と、1989年以降でなければ製造されていないアルミ缶のタブが、すでに岩石として固まっていたのです。

これにより、最短でも35年以内にスラグが岩石化していたことが確定しました。

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画像分析されたスラグ岩石/ Credit: University of Glasgow – Industrial waste is turning to rock in just decades, research reveals(2025)

この“新種の岩石”を構成していたのは、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガンといった化学的に活性な元素でした。

これらが海水や空気と反応することで、方解石や針鉄鉱(しんてっこう)などの天然セメント物質を生成していたことが判明しています。

これらは自然界でも堆積岩の形成に関与する鉱物ですが、通常は何千年もの時間を要します。

ところがこのスラグでは、同じ現象がわずか数十年間で完了していたのです。

研究チームはこの現象を「地球が新たに獲得した“人工岩石のサイクル”」と位置づけました。

しかもこれは特殊な例ではなく、世界中の鉄鋼スラグ堆積地で同様の現象が起きている可能性が高いとされています。

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