大人の友情が難しい理由とは?

誰しも「人とつながっていたい」と思うものですが、実際には30代以降で孤独を感じる人が急増しているといいます。
ソエイロ博士は、ある患者がレストランで笑い合う中年女性グループを見て「自分はなぜあんなふうに人と楽しめないのだろう」と落ち込んだエピソードを紹介しています。
この女性は仕事も恋人もいて、表面的には“うまくいっている”人生を送っていました。
しかし心のどこかで孤独を抱えていたのです。
実はこれは決して珍しいことではありません。
「職場で昇進したのに誰と祝うでもない」「子どもの送り迎えの場で他の保護者同士の会話に入れず疎外感を覚える」
そんな“孤独の瞬間”は、現代の大人たちにとってごくありふれた現象です。
では、なぜ大人になると友達ができにくくなるのでしょうか?
その理由のひとつは、人生の転機によって人間関係がリセットされてしまうからです。
引越し、転職、結婚、出産、離婚など、30代以降は大きなライフイベントが多く、かつて親しかった友人とも生活リズムや優先順位が合わなくなってしまいます。
さらに、友情は家族や仕事とは異なり、強制力のない「自発的な関係」です。
努力しなければ、簡単に疎遠になってしまうのです。

また、時間とエネルギーの問題も深刻です。
育児や介護、仕事で疲弊していると、誰かと遊ぶ気力すら湧かなくなります。
「気軽な誘い」が、もはや負担になってしまうのです。
そして何より、パンデミックによる“友情の断絶”が決定打となりました。
アメリカの調査機関「Survey Center on American Life」によると、アメリカ人の「親友の数」「友人と話す頻度」「友人に頼る頻度」以前よりも減少しています。
感染対策のための生活や在宅勤務が、これまでのような偶然の出会いや対面での関係構築を激減させてしまったのです。
加えて、SNSによる錯覚も孤独感を助長しています。
インスタグラムやFacebookでは、他人の「楽しそうな瞬間」ばかりが目に飛び込んできます。
その結果、「他人の友情のほうが自分よりうまくいっているように見えてしまう」のです。
こうした背景が重なって、「大人の友情」は、想像以上に複雑で脆いものになっているのです。
では、この状況を打破するにはどうしたらよいのでしょうか?