恐竜時代の南端に暮らした「小さな哺乳類」
化石が見つかったのは、チリ南部マガジャネス州にあるリオ・デ・ラス・チナス渓谷。
この地域は白亜紀後期の地層「Dorotea層」が露出しており、当時はゴンドワナ大陸の一部でした。
(※ ゴンドワナ大陸は、現在のアフリカ、南アメリカ、インド亜大陸、南極、オーストラリア、アラビア半島、マダガスカル島を含んでいた巨大な大陸)

発見された化石は、上顎の一部に臼歯1本と、ほかの臼歯の歯冠や歯根を含む小さな骨片です。
この歯の形態から、研究チームはこの動物がレイギテリイダエ(Reigitheriidae)という中生代哺乳類の一群に属すると判断しました。
これまでこの科は、アルゼンチン北パタゴニアで見つかった「Reigitherium」1属1種しか知られておらず、今回の発見が第2の種となります。
歯の表面にはエナメルの細かなギザギザや、噛み砕くのに適した縁帯(シンギュラム)が発達していました。
これらの特徴は、硬い種子や繊維質の植物を食べていた可能性を示しています。
また、骨格や分類学的位置から、現生のカモノハシのように卵を産む、あるいはカンガルーやフクロネズミのように育児嚢(いくじのう)で子を育てていた可能性も指摘されています。