白亜紀地層から見つかった小さな翅の化石
今回の化石が見つかったのは、約7,500万年前(カンパニアン期)の白亜紀地層です。
この地層は恐竜の骨が数多く出土することで知られていますが、昆虫の化石はほとんど見つかっていませんでした。
これまでに報告されたのは、琥珀に閉じ込められた顕微鏡サイズのアブラムシが1例のみで、昆虫の印象化石はゼロでした。
そんな中、2023年、マギル大学の学部生が脊椎動物古生物学の実習で岩を割っていたところ、部分的な翅の印象化石が現れました。
周囲からは多くの植物化石が見つかっていましたが、昆虫化石は予想されていなかったため、現場は驚きに包まれたといいます。

この化石は、後翅の一部で、幅は約14ミリ、長さは約17ミリ。
精密な観察と翅脈の解析により、既知のどのトンボ科にも当てはまらない特徴が確認されました。
特に、翅の静脈の細かさや配列の独自性など、多数の形質が既存の科や属と異なる組み合わせであることが挙げられています。
研究チームは、この化石を新属・新種として「コルドゥアラデンサ・アコルニ(Cordualadensa acorni)」と命名しました。
そして分類上の独自性から、新たに Cordualadensidae(コルドゥアラデンサ科) という科まで新設しています。
種小名「acorni」は、長年にわたりアルバータ州の自然史を広めてきた昆虫学者でサイエンス・コミュニケーターのジョン・エイコーン氏に敬意を表したものです。