「走る車への着陸」はなぜ難しい?跳ね返りとスリップをどう越えるか
ドローンは今や農業、物流、災害対応など幅広い現場で使われていますが、実は「着陸」での失敗が少なくありません。
「走行中の車両」へ降りる場合、その難しさはさらに跳ね上がります。
車が高速で走っていると、ドローンには強烈な風圧がかかります。
この風に対抗するため、機体は大きく前傾して飛ぶことになり、そのままの姿勢で降りようとすると、プロペラが屋根に接触してしまったり、着地時の安定性が大きく損なわれたりします。
また従来のドローンの脚は、固い素材でできていて、内部に十分な衝撃吸収構造がありませんでした。
そのため、車の速度があるラインを超えると、着地の瞬間に跳ね返ったり、脚が壊れたり、滑り落ちたりする事故が頻発します。
これまでの研究でも、車両が50km/hを超えると、着陸の成功率が著しく低下することが分かっています。
この課題を乗り越えるためには、衝撃吸収と滑り防止の両方を同時に実現し、高速でも安定して降りられる制御技術が必要でした。
そこで今回の研究では、三つの新技術が導入されました。
1つ目の「ショックアブソーバー」は、脚の内部に摩擦ディスクを組み込んだ特殊な構造です。
着地の瞬間にこのディスク同士が回転して摩擦を生み、着地時の衝撃エネルギーを一気に吸収することができます。
2つ目の技術は、プロペラの回転方向を一時的に逆転させ、着地直後にドローンを下向きに押し付ける力を生み出すというもの。
この働きによって、滑り落ちやすい高速走行中の車両の屋根でも、ドローンはしっかりとその場にとどまることができるのです。
さらに3つ目のとして、上空から車両を追尾し、高速で垂直に降下したのち、着地直前で機体を水平に戻す制御技術も実装されました。
この制御によって、プロペラが屋根に接触するリスクを回避しつつ、4本の脚で衝撃を均等に受け止めることが可能になります。
では、三つの技術を組み合わせた結果、どんな成果が得られたでしょうか。
次項には、実験の様子を記録した動画もあります。