恐竜時代の海棲爬虫類の「体温」は?
研究チームは今回、化石として残された歯や骨に含まれる「リン酸」の中の酸素の種類(同位体)に着目しました。
そもそも、動物の歯や骨は「リン酸カルシウム」という成分でできています。
このリン酸は、体液(体の中の水分)と化学反応を起こし、酸素の同位体が入れ替わります。
そのため、歯や骨のリン酸を詳しく調べることで、かつてその生き物がどんな体温で暮らしていたのかを知ることができるのです。

従来は、化石になった生物の正確な体温を調べる方法は限られていました。
しかし今回の研究では、歯に含まれる「三酸素同位体」という3つの種類の酸素原子の比率を精密に分析することによって、体液の温度――すなわち体温――を“化石そのもの”から推定することに成功しました。
調査対象となったのは、約1億年前の海に生きていた「プレシオサウルス」と「モササウルス」の歯化石です。
これらの化石に含まれるリン酸の三酸素同位体組成を最新の手法で調べ、さらに当時の海水の酸素同位体比と比較することで、驚くべき事実が判明しました。
プレシオサウルスとモササウルスの体温は、なんと23℃〜25℃と推定。
これは現代の温かい海を泳ぐサメやマグロのような“中温性”の魚類とほぼ同じレベルであり、従来イメージされていたクジラやイルカのような高体温(37℃前後)よりも10℃以上も低かったのです。