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雄のメバルは「鳴き声」と「おしっこ」で求愛していた / Credit:Canva
biology

雄メバルは「鳴いた」後、雌に「おしっこ」をかけて求愛していた

2025.11.07 11:30:40 Friday

長崎大学の研究グループが、海の魚たちの知られざる恋の駆け引きを世界で初めて明らかにしました。

日本近海に生息するクロメバルのオスが、繁殖期になるとメスに対して「音」と「尿」という2つの異なるサインを組み合わせてアピールすることを発見したのです。

この成果は2025年8月21日付の国際学術誌『Marine Ecology Progress Series』に掲載されました。

求愛に「おしっこ」と「鳴き声」!~メバルの奇想天外な求愛行動を世界で初めて解明~ https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science419.html
Urination and sound production during courtship behavior of male Japanese common rockfish Sebastes ventricosus https://doi.org/10.3354/meps14870

海水魚の「おしっこ」は求愛の武器になるのか

魚の世界にも恋のアピール合戦があります。

オスがメスに自分をアピールする方法としては、色や模様、動き、鳴き声、そしてフェロモンによる「におい」など、さまざまな手段が知られています。

たとえば淡魚では、尿に性フェロモンを含ませて水中に放出し、相手に「今が繁殖のタイミングだよ」と伝える戦略が一般的です。

しかし、海水魚では状況が異なります。

海水魚は体内の浸透圧調整の仕組みから尿の量が非常に少なく、「おしっこを使って情報を伝えるのは無理」と長年考えられてきたました。

そのため、海水魚における繁殖における尿の役割については、これまでほとんど研究が行われてきませんでした。

そんな中、長崎大学の研究チームは、身近な魚であるクロメバルに着目。

過去の観察では、クロメバルの仲間のオスが、求愛時にメスの鼻先に自分の泌尿突起を近づけるという行動が確認されていたのです。

研究者たちは「もしかしたら海水魚でもフェロモンによるコミュニケーションがあり得るのではないか」と考え、今回の研究がスタートしました。

ただ、海の中でごく少量の尿が本当に出ているかどうかを、目で確かめるのはとても難しい課題でした。

そこで研究チームはオスのクロメバルの膀胱に特殊な色素を注入。

水中で尿の放出が見えるように工夫し、求愛行動中のオスの動きを丁寧に観察しました。

同時に、水中マイクを使ってオスが発する鳴き声も記録しました。

魚類における「鳴音シグナル」は古くから知られており、メバル類でも音を発する種がいると分かっていたからです。

さらに生殖腺や膀胱の発達状況を野生・飼育個体の両方で調べ、求愛行動の全体像を多角的に明らかにしました。

次ページ雄クロメバルの求愛は「おしっこ」と「鳴き声」の合わせ技だった

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