「サメも遊ぶ」最も強い証拠が見つかった
「サメも遊ぶ」最も強い証拠が見つかった / Credit:Autumn Smith
biology

「サメも遊ぶ」最も強い証拠が見つかった

2025.11.04 20:00:14 Tuesday

アメリカのバイオラ大学(Biola University)とカブリロ海洋水族館(CMA)の共同研究によって、サメに遊ぶような行動が観察されました。

これまで「冷徹な海のハンター」として知られていたカリフォルニアドチザメ(レオパードシャーク)ですが、一部の種では満腹になると輪っかのおもちゃに近づき、鼻先でつついたり噛んだり、まるで子犬のように遊び様の行動を見せます。

特に、黄色やオレンジ色の輪っかにはっきりとした興味を示し、エサを食べる前と比べて大幅に積極的に接触する様子が観察されました。

研究者たちはこれがサメが遊びを行うこれまでで最も強力な証拠になると述べています。

この発見は、水族館でのサメの飼育方法や福祉向上のための新たなヒントを示唆されます。

しかし、なぜ満腹になったサメは遊びはじめるのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年10月1日に『Applied Animal Behaviour Science』にて発表されました。

Remote sensing of lichens with drones for detecting dinosaur bones https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.09.036

「サメは遊ばない」の通説に挑む

「サメは遊ばない」の通説に挑む
「サメは遊ばない」の通説に挑む / Credit:Autumn Smith

サメがおもちゃで遊ぶ──そんな光景はにわかには想像し難いかもしれません。

サメといえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは映画『ジョーズ』のような獰猛なイメージでしょう。

実際、サメの多くは鋭い歯と俊敏な動きで狩りをする、いわば「海のハンター」です。

イルカがボールで遊ぶ様子や、チンパンジーが仲間と戯れる姿は有名ですが、サメが遊ぶ話なんてまず聞きませんよね。

そもそも動物の「遊び」というのは、単なる暇つぶしではありません。

動物行動学では、「遊び」はその生き物が知能や精神的な余裕を持っていることの証と考えられています。

また既存の研究では、遊びを行うのは高度な知性の表れだとも述べられています。

食べるものに困っていたり、環境が厳しい状況にある動物は、遊びに時間を使う余裕などありません。

逆に言えば、「遊び」が観察されるということは、その動物が適度なストレスのない快適な環境で暮らしていることを示しているとも言えます。

最近の動物園や水族館では、こうした動物たちがストレスなく快適に暮らせるような工夫がとても重視されています。

この工夫は専門用語で「環境エンリッチメント(飼育環境を工夫して退屈やストレスを減らす方法)」と呼ばれます。

たとえば動物園のサルにはパズルのおもちゃが与えられたり、トラには隠れ家や池を作ってあげたりしています。

こうした環境を整えることで、動物たちは退屈せずに済み、同じ動きを延々と繰り返すような異常行動が減ることが確認されています。

もちろんこれは水族館でも同じで、魚の飼育環境を工夫する取り組みが広まっています。

たとえば、ゼブラフィッシュという小さな魚に、水草や隠れ家になる石を入れてあげるだけでも、不安そうに泳ぎ回る行動が減り、より自然な探索行動が増えることがわかっています。

しかし、魚の中でもサメやエイの仲間(板鰓類)の行動研究は、他の魚よりも遅れていました。

サメやエイは哺乳類や鳥類のように自分で体温を調整できない「変温動物」です。

そのため、水温などの環境条件で活動パターンが変わりやすく、遊びや行動を観察するのが難しいのです。

さらに、水槽のような限られた空間では、サメたちは自然界のように広い範囲を自由に泳ぐことができません。

そのため、どの行動がストレスや快適さを示しているのかを見極めるのも簡単ではありません。

このような理由から、「サメはおもちゃで遊ばない」という通説が長く信じられてきました。

けれども、もしサメにも遊びのような行動があるとしたらどうでしょう?

それはいつ、どのようなタイミングで現れるのでしょう?

お腹が満たされてストレスのないとき、つまり満腹のタイミングで遊びはじめることがあるのでしょうか?

米国の研究チームは、そんな素朴な疑問を確かめるため、水族館でユニークな実験を行いました。

次ページサメの「遊ぶ心」は食後に目覚める

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!