「サメも遊ぶ」最も強い証拠が見つかった
「サメも遊ぶ」最も強い証拠が見つかった / Credit:Autumn Smith
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「サメも遊ぶ」最も強い証拠が見つかった (2/3)

2025.11.04 20:00:14 Tuesday

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サメの「遊ぶ心」は食後に目覚める

サメの「遊ぶ心」は食後に目覚める
サメの「遊ぶ心」は食後に目覚める / Credit:Autumn Smith

サメは本当に遊ぶのか?」

そんな問いに科学的に答えるため、研究チームは米国のカブリロ海洋水族館で飼育されているサメとエイを対象に、あるユニークな実験を行いました。

研究対象となったのは、ツノザメ(5匹)、カリフォルニアネコザメ(ホーンシャーク)(5匹)、カリフォルニアドチザメ(2匹)、カリフォルニアスケート(1匹)の合計4種13個体です。

いずれも水族館の水槽で暮らす健康な個体でした。

方法はシンプルです。サメやエイが暮らす水槽に、直径約14センチのカラフルなプラスチック製の輪っかを入れ、サメたちがどのように反応するかを観察しました。

使った輪っかの色は青・緑・黄色・オレンジの4色で、どれもプール遊びで使うような市販品に近いものでした。

観察は、サメたちがエサを食べる前と食べた後、それぞれ1時間ずつ行い、行動の違いを比較しました。

「なぜエサのタイミングで調べるのか?」と思う人もいるかもしれませんが、動物の行動をもとにした理由があります。

動物は空腹のときはまず食べ物を探すことが最優先になりますが、満腹になると食べ物を探す必要がなくなり、遊びのような行動をとりやすくなることが知られています。

このような「満腹状態で遊びが増える現象」は、ラットなど他の動物でも一般に確認されています。

もちろん人間でも同じことが言えるでしょう。

そういうわけで研究チームは、サメにも満腹になった後に「遊びやすくなる時間」があるのかを確かめようとしたのです。

実験の結果は研究チームにとっても驚くべきものでした。

全体として、サメたちはエサを食べた後に輪っかへ触れる頻度が明らかに増加しました。

特に劇的な反応を見せたのが2匹のカリフォルニアドチザメです。

この2匹は満腹になると、まるでスイッチが入ったかのように活発になり、輪っかに突進したり、鼻先で押したり、口でくわえて運んだりといった行動を繰り返しました。

その接触回数は、餌を食べる前に比べて大きく増加しました。

一方で、他のサメ、特に夜行性のツノザメやカリフォルニアネコザメは、輪っかへの関心をあまり示しませんでした。

つまり、満腹状態で活発に「遊び様の行動」を見せたのはカリフォルニアドチザメであり、この種が水槽内で最も活発に反応したことがわかりました。

次に、サメが反応した輪っかの色について調べたところ、はっきりとした傾向がありました。

4色のうち、特に反応が多かったのは黄色とオレンジの明るい色です。

満腹になったカリフォルニアドチザメがまず向かうのは、いつも黄色の輪っかでした。

まるで、子どもが食後に楽しみにしていたデザートに向かって一直線に駆け寄るような光景です。

一方で、青や緑の輪っかにはあまり反応しませんでした。

研究チームは、サメが色の鮮やかさよりも「明るさと暗さの差(コントラスト)」を手がかりにしているのではないかと考えました。

サメの多くは「単色視」という目の特性を持っており、色の細かな違いよりも、明暗の差が大きい物体のほうが見やすいと推測されます。

今回の結果は、この仮説を支持する内容となりました。

また、この実験は数か月にわたって続けられましたが、カリフォルニアドチザメの行動は最後まで活発でした。

実験開始直後こそ輪っかに警戒していましたが、しだいに慣れ、数週間後には最も盛んに触れるようになりました。

その後も興味は持続し、実験が終わるまで高い関心を保ち続けました。

つまり、満腹の状態で慣れさせながら適度な刺激を与え続けることで、サメも長い期間にわたって興味を持ち続ける可能性があることがわかったのです。

研究チームは、満腹というタイミングと、輪っかの色(特に明るい黄色やオレンジ)がサメの行動を引き出すうえで重要な要素だと結論づけました。

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